1.実験方法および項目の検討 最近の文献サーベイを行い、その結果をデータベース化し、視線および姿勢分析に関する実験項目や実験方法を調べ、その適応妥当性と有効性を検討した。アイマークレコーダを用いた階段歩行時の研究は非常に少なく、松葉杖使用時の階段歩行分析はまったくなかった。 2.実験装置の検討 視線計測については、アイマークカメラを用いたプレテストを重ね、階段特有のキャリブレーション方法や測定方法などを開発した。姿勢計測については、3軸方向の重力加速度を用いた姿勢計測装置を試作し、プレテストを重ねたが、重力加速度と運動加速度の分離、またはノイズの除去が困難であった。運動による衝撃や運動加速度およびノイズを除去し、重力加速度のみを検出し、3軸の重力加速度から姿勢を計算するためにハイパスフィルターやローパスフィルターの利用を考えたが実用までいかなかった。 3軸の重力加速度から運動成分を分離することは困難であるため、3次元動作解析装置の導入が必要である。なお、アイマークデータと3次元動作解析装置の結果を統合して分析可能なシステムが近年開発され利用可能になったのでその利用も視野に入れることとする。 3.階段下降時の視線移動の分析 階段下降時の高齢者の視点移動の特徴を分析した。高齢者は視機能の老化により、上方視野狭窄などの視機能低下による情報処理能力の不足を補うために、明るい照明環境下であっても直接顔を足元に向けて見ることで安全確認を行っていた。その結果、前傾姿勢となり転倒の危険性が増し、前方の安全確認がおろそかになり、突然視界に出現する障害物への対応が遅れると予測される。また、高齢者では照明条件の悪化による視機能の低下が顕著であり、注視点数を増やし、情報入力回数を増やすことで視機能低下による情報量の不足を補填していることが伺えた。
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