【はじめに】易感染状態の患者が食事を安全に摂取できるように、細菌学的な検討を行った。【方法】人工胃液(pH1.2、2.5、4.0、7.0)を作成し、指標菌に大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSAを用い、人工胃液中の細菌の消失程度を観察した。また、粘膜保護剤等の薬剤を服用した際の影響についても調査した。【結果・考察】人工胃液pH1.2では、全ての指標菌は30分以内に消失した。pH2.5では、黄色ブドウ球菌、MRSAが60分以内に消失したが、大腸菌は10^1個程度の減少であった。pH4.0では、MRSAのみ10^2個程度の減少を示し、大腸菌と黄色ブドウ球菌に変化はなかった。pH7.0では、変化はなかった。更に、5種類の薬剤を加えた実験では、1種類のみ人工胃液のpHを上昇させるものがあり、それを添加した人工胃液内の細菌消失はなかった。以上の結果から、易感染状態患者の食事摂取時の注意点としては、食物の細菌数を減じるだけではなく、胃液の強酸環境を維持できるように、内服薬や食品等の内容も考慮する必要があると考えられた。
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