研究概要 |
今年度は、次の2つの目的のもとに研究を行った. 目的1:臨床看護における身体抑制に関する実態や改善に向けた取り組み等を分析し,「抑制プロトコール」構築の示唆を得ることを目的に,医中誌Web版(Key Words:身体抑制,看護アセスメント,臨床プロトコール)及びPub Med (Key Words : Restraint, Physical, Nursing Assessment, Nursing Protocols)により2005年から過去10年間に遡って文献の検討を行った.その結果,1:身体抑制の動向については,1)抑制される対象者の特徴として高年齢,見当識レベルの低下(痴呆,せん妄等),ライン類・カテーテル類等の治療器具の留置等が挙げられること.2)急性期病棟においては長期療養型施設に次いで抑制が用いられていること.3)福岡宣言,厚労省の推進する「身体拘束ゼロ作戦」を契機に療養型施設においては抑制廃止が進んでいる反面,急性期病棟においてはその使用に関して大きな変化がみられていないことが明らかになった.また,2:抑制プロトコールに関しては,1)抑制の実施は,抑制される対象者と抑制する医療者,物理的・時間的環境の3要素があり,この側面から「抑制施行の決断指標(アルゴリズム)」を作成する必要性があること.2)その場合も「切迫性」,「非代替性」さらに「一時性」の抑制3原則を全て満たす必要があること.3)本人や家族への情報提供については同意書も含め,いまだ十分に検討されていないこと,等が明らかになった.これらの知見をベースに抑制プロトコールの試案を作成した. 目的2:急性期病棟における抑制の実態を把握するための質問紙調査作成にあたり,その予備調査として急性期病棟に勤務する看護管理者に面接を行った.その結果,抑制される対象特性や医療者側,環境的な要因以外に,抑制施行に関する指示権限者や同意書の有無,また抑制の代替策等,施設による相違を明確にする必要性が明らかになった.
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