臨床看護師は、患者との関わりの中でその場の状況を熟考しつつ見極めて、よりその状況に相応しい実践を行っている。こうした看護実践の為され方は、これまで理論知や客観的な知と二分されそれと対比した知として論じられたり、幾つかのパターンに分類整理されそれを統合した知として説明されるに留まっている。しかし実践の為され方は、理論知と全く無縁であるわけでなく、また再統合というかたちで行われているとも言い難い。それゆえまず実践は、実際に為されているがままに濃やかに記述される必要がある。 本研究では、このような臨床看護師による具体的な実践を、当事者の視点からそれが為されているように記述し、そこに専門家の知恵としての「実践知」がいかに働きだしているのかを明らかにすることを目的とした。 本研究の開始にあたって、研究者が所属する機関の研究倫理委員会にて、本研究の倫理的配慮についての審査を受けた。その後、東海地区にある某総合病院の看護部を通して、研究対象者を募った。研究対象者は、配布された応募用のパンフレットを見て自主的に研究への協力を申し出た臨床経験10〜15年の看護師6名である。現在、1)「看護経験を語る会」と称するフォーカス・グループ・インタビュー(6名参加、2回開催)、2)個別インタビュー(各1回実施)によってデータを収集している。いずれのインタビューにおいても、研究対象者によって語られる具体的な事例をもとに、研究者と研究参加者が実践の為され方や特徴について共に語り合うというスタイルで対話を進めている。 今後は、上記の調査を継続すると共に、インタビューデータを逐語におこし、それを解釈しつつ実践知の特徴を見出していく予定である。
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