本研究は、人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty : THA)後患者のQOL向上に資するアセスメントツールの開発に向けて、本年度は、以下の2つの内容について検討を行った。 1.先行研究および関連する研究論文をもとにした、アセスメントツール原案の作成 2.THAを予定している外来患者への実態調査 ◆実態調査の概要 【研究方法】 股関節の変形性疾患でTHAを予定している外来患者8名を対象に、自宅への訪問調査を行った。調査期間は、平成17年1月〜2月であった。調査内容は、対象の生活習慣を把握するために、先行研究を参考に個人属性と住生活に関する聞き取り、居室内の写真撮影と計測、生活動作のVTR撮影を行った。倫理的配慮については、名古屋市立大学看護学部の研究倫理委員会の承認を得た後に、文書と口頭にて協力者(家族)への十分な説明を行い、同意を得た上で調査を行った。 【結果・考察】 対象8名(女性6名、男性2名)の年齢は32〜72歳(平均59±12.7歳)、職業は会社員3名、自営業3名、専業主婦3名であった。疾患は変形性股関節症7名、大腿骨頭壊死症1名で、予定術式は初回THA6名、再THA2名であった。住居は戸建て6名、集合住宅2名で、居住年数は3〜29年(平均10.4±8.7年)であった。8名の対象は、股関節の疼痛と拘縮による可動域制限が著しく、多くの対象が椅子(座面高40cm前後)を常用していた。しかし、中には痛みがあっても正座を好む対象もみられ、このような事例では、しゃがみ込みや立ち上がり時の、脱臼回避動作のアセスメントが不可欠であると示唆された。また、入浴時の動作が、浴槽や浴用椅子の様式等の物的環境の影響を受けやすい一方で、ズボンをはく・足趾の爪切り等の動作では、周囲の物的環境よりも、むしろ動作方法の詳細なアセスメントが重要であるとの知見が得られた。
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