【目的】本研究の目的は温罨法の器具の違いが生体反応と温度感覚に及ぼす影響を検証することである。昨年度に引き続き平成17年度の研究では、熱源が異なる器具を用いた場合の保温と安楽の効果とその個体差に注目してきた。【倫理的配慮】研究の実施にあたっては、聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認を得た。対象者には研究への協力を文書および口頭で説明した。その上で、匿名性維持と秘密保持に関する事項および同意後も途中で中止できることを明記した同意書を交わした。【方法】同一被験者に対して日を変えて「湯たんぽ」「電気毛布」を無作為に割り付けた。実験は冬季(12月から4月)に行った。主観的指標として温度感覚・湿度感覚・快適感、客観的指標として心拍数・腋窩温・皮膚温・皮膚血流量・寝床内気候を測定した。【結果】平成17年度は2名の学生に対して実験を行い、平成16年度の5名のデーターと合わせて解析した。1)主観的評価:湯たんぽを「自然な暖かさ」で「快適」と答えた4名は、電気毛布を「不自然な暖かさ」で「不快」と評価した。電気毛布の不自然な点は「暖かくなりすぎる」「暑い」「汗をかく」であった。2)客観的評価:心拍数・腋窩温・皮膚温・皮膚血流量・寝床内気候に器具の違いを示す有意な所見は見当たらなかった。【考察】電気を熱源とし、設定した温度を一定に保つ電気毛布は、寝床内の温度が一定であること、広範囲に暖まることが高く評価された。一方、温湯を熱源とする湯たんぽは湯温が徐々に下降し、保温効果に優れているとは言い難い。ところが、この点がかえって評価されていた。【結語】温罨法は器具の特徴を踏まえて使用することで、個に適した寝床内気候を調節することができる。
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