研究概要 |
本研究は、遷延性意識障害患者における生活活動性を高める摂取エネルギー量を検討することが目的であり、平成16年度は非経口的に栄養摂取している遷延性意識障害患者に関する栄養状態の評価を行った。日本脳神経外科学会の「遷延性植物状態」基準に準じて、非経口的(経鼻栄養・胃瘻等)に栄養摂取している意識障害患者58名を対象に、1)診療録からの調査(性別・年齢・意識障害に至った疾患名・意識障害の期間・入院期間等),2)血液検査値(WBC・RBC・Plt・Hb・Ht・Alb・Na・K・Cl・BUN・Cr等),3)身体計測(%AMC;上腕筋周囲長・%TSF;上腕三頭筋部皮下脂肪厚・%SSF;肩甲骨下部皮下脂肪厚・%下腿周囲長等),4)全身状態の観察等を指標として、栄養状態の評価を行った。その結果、遷延性意識障害患者は男性が22名(37.9%),女性は36名(62.1%)であり、脳梗塞後の患者が25名(43.1%)と最も多かった。意識障害に至った疾患における発症からの期間は平均45.9±52.1ヵ月と長期に及んでいた。そして、血液検査値が明らかである46名中、%AMC(上腕筋周囲長)・%TSF(上腕三頭筋部皮下脂肪厚)・%下腿周囲長・Alb(血清アルブミン)値ならびにTLC(総リンパ球数)の5項目の評価において、38名(82.6%)は低栄養のリスクが高いことが明らかになった。したがって、非経口的に栄養摂取している遷延性意識障害患者は低栄養の危険性が高いことから、定期的な栄養評価の必要性が示唆された。平成17年度は遷延性意識障害患者の身体および精神状態、生活行動、二次的合併症の発症状況から、適正な摂取エネルギー量について検討する予定である。
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