退院は患者やその家族にとって、しばしば入院以上に脅威や不安を感じさせるものである。したがって、退院支援は、単に入院中に受けた治療や看護を継続するためのものではなく、退院に伴って新たに生じる心理的・社会的な問題を解消するためのものでなくてはならない。特にターミナル期の患者や家族は、最後は家で迎えたい、迎えさせてあげたいとの気持ちを持ちながら、同時に不安や恐怖、命を預ける・預かる重圧を感じている。また、ターミナル期の患者は予後も短く、また病状が急変する可能性も高いので、退院支援の遅れにより、在宅への移行時期を逸してしまうことも少なくない。したがって、適切な在宅への移行時期を見逃さないことや、退院後の療養生活やサポート体制を十分に整え、安心して退院できるように支援を行うことが重要となる。 日本では病院機能として退院支援を行っているところは少なく、現状では、退院支援に関する調整は受け持ち看護師が行うことが多い。そこで、看護師が行っているターミナル期の患者に対する退院支援の現状を把握と問題点の分析を行うために、調査を行うこととした。調査票の作成にあたり、ターミナル期の患者に対する退院支援に関して、国内外の文献を検討した。国内外とも、在院日数短縮の傾向は同様であり、保健や医療の場が急性期病院から地域や在宅に移行している。欧米では、退院後の適切なケアの計画作りと、必要なサービスのアレンジまでが病院の基本的な責任と捉えられており、退院先、在院日数、再入院などの関連要因について研究が成されている。一方、日本の多くの病院においては、退院支援は始ったばかりであり、その多くは事例報告であった。 また、某大学病院に保健医療福祉ネットワーク部が設置され、病院全体として退院支援、地域連携に力を入れている。特定機能病院における退院支援システムに関する情報収集を行うために研修を行わせて頂いた。患者や家族の意思の確認、意思決定におけるサポート、看護師の意識、院内外における他職種との連携など、多くの重要な点があることを改めて学び、調査票の作成へ役立てた。
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