本研究は人工肛門保有者の効果的な支援方法の構築を目的として以下の点を明らかにすることである。人工肛門保有者の排泄に対する認識、負担の内容を明らかにし、それらの結果より人工肛門保有者の排泄負担感調査表を作成後、排泄調整可能な装具(禁制型装具)を使用することで排泄の負担が変化するかを調査することを研究計画をとした。 人工肛門保有者の排泄負担感の調査用紙作成前の構成要素を抽出するために結腸人工肛門保有者10名に排泄の認識に関連する内容、日常生活上の支障についてインタビューし、質的分析を行った。この調査の結果より以下の知見を得た。 1.人工肛門保有者は人工肛門から排泄があること、装具を腹部に装着していること、その装具に排泄物(便)をためることに対して強く意識しており、医療者が目標とする人工肛門を意識しないこととは解離していた。 2.人工肛門保有者は「排泄」を強く意識すると共に「排泄物」に対しても常に強く意識していた。特に装具内にたまる便やガスとそれらから発生する臭いに対する嫌悪感と自己概念の変化を説明するものであった。 3.これらの排泄及び排泄物に対して強く認識することや療養体験、障害者意識などから外出・旅行、性生活などの生活行動に障害をもたなくても生活意欲を低下させていた。 4.今回の対象者はすべて直腸癌または肛門癌により人工肛門を造設する人を対象であったため、人工肛門や排泄に対する認識の他にがん闘病に対する認識についても抽出された。人工肛門造設や保有を残念に思いながらも、強く意識することでがんの闘病に対して積極的な姿勢をもつという特徴がみられた。 以上の結果より、質問紙の構成要素が抽出された。これらの内容より人工肛門保有者の排泄負担感の調査用紙の作成中である。それによって禁制型人工肛門装具使用前後の比較することが一可能となり、人工肛門保有者ののぞむ排泄のあり方を調べるための一資料となりうる。
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