本研究は、臨床において看護師が家族との関わりで遭遇する困難を軽減し、家族ケアの質を向上させることを目的とした。そのため現存のCFAM/CFIM理論を参考に、今年度の具体的な目的を「看護師の家族介入に対する困難感・課題」を明確化することとした。急性期、在宅、老人の3領域の看護職を対象にグループインタビューを実施し、得られたデータを質的に分析した。 1.看護師は、「家族看護」に対して、重いもの、難しいものというイメージを持っていた。 2.「家族の決定事項」が、患者の利益につながらない場合、看護師は家族に否定的なイメージを抱きやすく、それ以上の関わりを持ちにくい傾向があった。また、家族の決定事項を尊重しようとするが、看護師自身の価値観と不一致であるため、「割り切り」、「あきらめ」という感情が生じていた。 3.患者の死など非日常時の「キーパーソン」は、日常の患者ケアでの家族員から、看護師が普段接することのない家族員に代わっていた。看護師はこのような状況下で、家族システムの一部として揺れ動き、看護の方向性を見いだせずにいた。また、患者のQOLの向上につながらないため不全感を抱くという悪循環が生じていた。 4.看護師が想定する家族は、患者の日常ケアを行う家族員以外に、患者の話に出てくる家族員や、見舞いに来る家族員などが含まれた。しかし、それらの家族員は看護記録に留められておらず、記録にない家族員の情報共有のあり方が課題として残された。 本年度の取り組みとして、実在する事例(喧嘩が絶えない老夫婦システム)のロールプレイを実施したところ、訪問看護師の認識に変化がみられた。各家族員の気持ちを推測するロールプレイが、看護師の"対象の言葉に囚われた説明重視の対応"から"情緒的サポート"へと関心を移し、CFIMで提唱する感情面に焦点をあてた実践に効果的であることが示唆された。
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