本年度は、昨年度に引き続き文献検討と3事例のデータ収集およびデータ分析を行った。 (1)文献検討:先行研究では、先天異常の子どもをもつ女性の次子出産の背景や要因について、将来患児を支える同胞の必要性を感じたため、普通の育児を経験するため、一度患児を育てた経験と自信があるため、という点が報告されている。一方で、先天異常の子どもをもつ女性が次子を産むか産まないかという気持ちの揺らぎについて、妊娠が確定した後の羊水検査が現実に迫ると産むべきか産まざるべきかという葛藤や揺らぎがあった、という報告や胎児に異常が見つかった場合の人工妊娠中絶に対し、多くが賛成しながらも躊躇するという報告があり、女性達は妊娠を続けるか否かの意思決定の間で揺れていた。また、困難な決断を迫られている人の意思決定ガイドであるオタワ個人意思決定ガイドを用いた調査では、個人の意思決定に関する葛藤にもたらす効果について、明らかな効果や害や不都合を認めなかったという結果を踏まえると、看護支援について検討の余地がある。 (2)データ収集及び分析:3名の対象者に対して面接調査を行った。(1)受診理由(2)出生前診断に関する意思決定(3)出生前診断前後から結果判明までの気持ち(4)検査結果判明後の意思決定(5)出産後の体験(6)家族との関わり(7)看護職者など医療者との関わり、という点で半構成的面接を行った。3事例からは(1)前回の子どもに先天異常があったから(2)次子に異常があるとわかれば人工妊娠中絶をする予定だった(3)不安や罪悪感(4)染色体異常がないと分かったから分娩に至った(6)パートナーが支えた(7)重要な時期にカウンセリングをしてくれた、という貴重なデータが抽出された。 (3)平成18年度の方針:以上のデータを踏まえ、最終年度となる来年度は、さらに面接調査をすすめ、データ分析を行い、結果を導くとともに学会発表と論文投稿を行いたい。
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