<結果> 上記研究テーマに基づき、半構成的インタビューガイドを用いてインタビューを実施した。対象者は16家族20名(男性8名・女性12名)。患者死亡からの経過年数は8ヶ月〜9年。インタビュー時間は35分〜125分であった。 (1)ターミナル期にあるがん患者の家族が認知する看護師のケアリングは、【患者が人として大事にされる】【患者の身体的苦痛が和らぐ】【家族も気にかけてもらえる】【自由度を広げる療養環境】【物腰が柔らかい】などで、それらは【ちょっとしたことでも頼みやすい】【任せられる安心】を生み、【やらなければならない負担の軽減】【患者は幸せだった】という家族の満足感につながっていた。(2)逆にケアリングとならなかった看護師の関わりは、【患者の苦痛が軽視される】【心のない事務的な対応】【頼んでも拒まれる】などがあり、これらに対しては【仕方がない】【お世話になっているから我慢する】とあきらめていた。(3)直接的な看護師の関わりはなく、看護師不在でケアリングがないは、【医師との対立:治療方針・治療の場の決定】【医師への不信:説明不足】【抱えているものを分かち合えない存在】【自分たちでどうにかする】などがあり、最後まで看護師に役割を期待していなかった。特に【医師との対立・医師への不信】は患者の死後も、【後悔・怒り・わだかまり】を残した。 <考察> 家族にとっては第一義的に患者に対する看護師の関わりが家族へのケアリングとなっていた。これは家族が患者を自身の分身のように感じ、患者の苦痛や患者への応対の一つ一つを自分の痛みとして敏感に反応しているものと考えられる。逆に言えば、看護師の患者に対する関わりが、家族にとっては患者の死後も【患者は幸せだった】と家族の悲しみを和らげる糧となりうることが確認された。また、家族は看護師が考えている以上に、医療者に対して我慢やあきらめを強いられる立場にあり、これらが患者の思いを代弁したくてもできないストレスとなりうることを厳しく自覚することが求められる。看護師不在でケアリングがない【医師との対立・医師への不信】に対し、患者/家族-医師関係の調整において、看護師が患者/家族にとって資源となりうることを看護師側からアピールし、期待される存在として認知されることの重要性が示唆された。
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