研究概要 |
本年度の目的は、家系員への遺伝情報開示の意志決定過程の1つである患者の体験に焦点をあて、看護支援方法を明らかにすることである。以下の2点を計画し研究を進めた。 1.家族性大腸腺腫症患者の予防的手術後の患者の体験や、患者を中心とした症状マネジメントの方略の明確化 2.海外のがん予防医学の現状とそれに関わる看護師の役割に関する内容把握 家族性大腸腺腫症患者5名を対象に、症状マネジメントの概念枠組み(The Model of Symptom Management : MSM)を用いて質的記述的研究を行った。結果は、MSMの中の症状体験の中には、自分自身の体験のみでなく、過去に自分と同じように予防的手術を受けた親の体験が潜在的にあり、それを土台に自分の症状体験を捉えていることが明らかとなった。これは、家族性腫瘍患者の症状体験の特徴であり、患者自身の症状マネジメントの方略にも影響を及ぼしていた。 海外調査では、Oncology Nursing Society 29th Annual Congress April 29-May 2,2004・Anaheim, CAに参加し、がん予防スクリーニングやリスクアセスメント後のカウンセリングについての米国の現状を調査した。ここでは、看護師が家族をシステムとして捉え、家系員の感情的な反応にも注意を払うことの必要性が示されていた。 今年度の研究調査からは以上の結果が得られたが、次年度は家系員への遺伝情報開示の意志決定過程の中の、「家系員への遺伝情報開示のプロセス」に焦点をあてた調査を行い、家系内の複数の罹患者に対して看護者が介入する方法を構造化する予定である。
|