本研究は、外来化学療法を受ける肺がん患者が残された時間の中、望む生活が送れるよう、治療中の体力維持・向上に向けた運動プロトコルを作成することを目的としている。先行研究が少ないため、第一段階として体力の低下とこれへの対処について現状を把握するためA総合病院の外来で化学療法を受けている肺がん患者10名(PS1)にインタビューを実施した。その結果、患者が最も体力が低下していると自覚していたのは、退院直後であった。その後、女性3名は自宅で家事労働を徐々に増やし、最終的には治療前と同程度まで回復していた。一方、男性6名は体力をつけるためにウォーキングやストレッチを実施していた。仕事をしている1名の男性は、運動習慣はあったが通勤に時間がかかるため実施していなかった。治療期間は3ヶ月から2年半と幅はあったが、最も訴えが多かった副作用は倦怠感であった。しかしながら、そのために活動量が減るということはなかった。むしろ、倦怠感は意欲を低下させており、意欲がわかない理由として病状の悪化や体力の低下をあげていた。反対に、ある程度思い通りに活動できていれば、それが自信となり、安心感が生じることがわかった。よって体力をつけるような活動は、ただ単に日常生活を送りやすくするだけではなく、この状況に立ち向かう気持ちにも良い影響があることがわかった。また、これまでは木々を見ても何も感じなかったが、告知された今では、自然に触れることで英気が養われるという者がおり、運動内容以外に運動する場所、時間帯、メンバーを考慮することが重要であることが示唆された。今後は、運動前のメディカルチェックの検討に加え、その人が望む活動を重視し、意欲を高めることを目的とする内容も含めプロトコルを作成する。またプロトコルの使用にあたっては、対象となる施設の倫理委員会に申請し承認を得て、必ず主治医の指導のもと実施することを考えている。
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