産褥早期の乳房皮膚温とともに唾液中プロラクチンの変動についての基礎的データを得ることを研究目的とした。A産婦人科個人病院に入院中で合併症がなく、母児同室を開始した正常分娩後の褥婦5名(初産婦3名、経産婦2名、平均年齢24.0歳)を対象に、平成18年3月に調査を行った。産褥1日から3日の10時から11時に、乳房皮膚温の測定と唾液の採取を行った。また産褥2日の貧血検査時には、唾液中プロラクチンとの整合性をみる指標として血液の採取を行った。乳房皮膚温は、プライバシーに配慮した上で、乳房を5分程度室温に順応させ、コンパクトサーモロガー(安立計器株式会社製)の温度センサを乳房の外側部分3箇所に貼付して行い、その平均皮膚温を算出した。唾液の採取は、脱脂綿を口腔内で約1分間転がして唾液を染み込ませ、SARSTEDT社のSalivette容器に入れて検査機関に冷蔵輸送し、プロラクチン濃度の測定を依頼した。血液は採血管に採取後、検査機関に冷蔵輸送し、プロラクチン濃度の測定を依頼した。そのほか、乳汁分泌に影響すると思われる情報をカルテより収集した。対象の選定や血液の採取にあたっては、研究協力者である医師の協力を得るとともに、対象者には研究目的や自由意思での参加であることを文書にて説明し、同意を得た。乳房皮膚温を概観すると、産褥1日から3日にかけて上昇している対象者が多くみられた。血清中のプロラクチンに関しては、先行研究と同様の値を示しており、乳汁分泌の過程として順調な経過であると考えられた。一方唾液中のプロラクチン濃度に関しては分析中であるが、現在までの検査機関による分析の結果では基準値以下であり、今回の分析方法では検出が困難であることが推測された。今後結果が出たところで再度唾液中プロラクチンと血清中プロラクチンの値について分析し、唾液からのプロラクチン検出の可否について検討するとともに、唾液中プロラクチンの分析手法についての検討を行うことを今後の課題としたい。
|