本研究は、慢性的な痛みを抱える患者への看護のあり方を考えていく上での手がかりとするために、何らかの原因によって6ヶ月以上の痛みを抱えた患者が、慢性的な痛みをどのように体験し、どのような対応をしているのかを明らかにすることを目的とした。対象者は、慢性痩痛患者のための精神集団療法を行ったことのある患者12名とその家族5名であり、方法は自記式質問紙調査と、半構造化面接を用いて、治療経過における思いや対処行動などを中心に聴き取りを行った。結果は以下のとおりであった。 1.対象者の疼痛期間は、平均9年8ヶ月で長期にわたる痛みを抱えていた。 2.慢性的な痛みを持ち続けると内面の苦悩が増して自殺念慮や、対人関係の円滑さの喪失、性生活の問題などが生じていた。 3.慢性疼痛患者は、自己の痛みに対処する方法として、代替療法や民間療法を併用して多額な支払いをしているものもいた。 4.慢性疼痛患者を抱える家族は、「痛み行動」に反応しないという独自のパターンを形成し、上手に対処しているケースもあった。 5.集団療法に継続的に参加することで、情緒的なサポートを得るなど、互いに痛みを分かち合うことがなされていた。 以上より、医療者は、痛みを持つ患者が自己の痛みをどのように表現しているか十分に聴く姿勢を持つことや、自殺念慮や夫婦間の問題などを積極的に話題に取り上げること、患者及び家族同士の問題解決の場を確保することなどの重要性が示唆された。また、慢性落痛患者が痛みを緩和する方法として、代替療法・民間療法を活用する頻度、内容や効果について調査を行うことは、離職などにより経済的基盤が脆弱な患者にとって無用な出費を防ぎ、治療効果のある適切な方法を選択するための資料を提示することになる。今後は医学・看護学教育や、一般社会においても慢性疹痛に対する認識を高めていく必要性があると思われる。
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