今年度は妊婦の身体活動量の測定器具としてライフコーダEX(スズケン)の妥当性について検討した。この測定具は成人の糖尿病患者の運動療法(特にウォーキング等の患者が自己管理で行う運動)に用いられ、運動の強度や消費カロリーを患者自身が確認することが運動の継続を助けるという報告がある。しかし、妊婦を対象とした研究については、学会発表で報告されてはいるが、測定値の妥当性については検討がなされていない。そこで、本研究でライフコーダEXを用いるにあたり、日記法による生活活動調査を併用することを検討した。 妊娠中期から産褥1ヶ月まで、都内の1名の妊婦にライフコーダEXの装着および日記法による生活活動調査を依頼した。その結果、(1)日記法による生活活動調査の限界、(2)ライフコーダEXの装着に関する対象者の負担についての2点の問題点があがった。 (1)日記法による生活活動調査の限界について:生活活動動作の例を提示していたが、調査票に記述する生活行動に洩れがあり、ライフコーダEXで測定した強度の強い行動が必ずしも記載されていなかった。今回は1名の対象者についての実施であったが、対象数を増やすにあたり、生活行動についての既存の質問紙を参考にしてひとつひとつの生活行動の選択肢を用いた生活活動調査票の作成を検討していく必要があることがわかった。 (2)ライフコーダEXの装着に関する対象者の負担について:測定具自体の重量は60gと軽く、日常生活に支障はなかったが、同居する幼い児が測定器に興味をもち、附属のボタンをいたずらして押してしまうこともあった。また、対象者の妊娠中の入院などのイベントで計測が中断されることもあった。産後1ヶ月にも装着を依頼したが、育児に多忙な期間で睡眠や覚醒のパターンも一定ではなく、装着は困難であった。 「セルフモニタリング」は対象者が目標とする行動を継続していくことに有効な手段であるが、今回対象者がモニタリンクを実施すると同居の家族も興味をもっていたことがわかり、本人だけではなく家族の行動変容の可能性も考えられた。 今後は、同じ対象者の非妊娠時の生活行動における身体活動量をライフコーダEXで測定し、妊娠時と非妊娠時の比較を行う。
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