研究概要 |
思春期の慢性疾患患児の自己イメージの特徴について、対照群と比較検討した。慢性疾患をもつ中学生および高校生49名(疾患群)と、健康な中学生および高校生49名(対照群)を対象に、自己肯定意識尺度、および主観的統制感尺度を用いた質問紙調査を行った。その結果、自己肯定意識41項目について6つの主成分が抽出された(主成分分析、プロマックス回転)。6主成分ごとに、疾患群と対照群の差の検定を行ったが、有意差は認められなかった。41項目ごとに群間の差の検定を行ったところ、「自主的に話しかけていく」のみ、疾患群の意識度の方が低く(t_<(65)>=-1.95,p<.10)、罹病期間が平均よりも短い患児ほど、「自分には自分なりの人生があっていいと思う」、「生活がすごく楽しいと感じる」で対照群との有意差が認められ、いずれも疾患の方が低値(t_<(65)>=-2.07,p<.05)(t_<(65)>=-2.05,p<.05)を示すなど、罹病期間が長くなると、自己受容がすすむ一方、友人とのかかわりには、消極性が示された。主観的統制感尺度については、有意差は認められなかった。つづいて、思春期の慢性疾患患児をもつ親からみた、患児の自己肯定意識、および親自身の主観的統制感について調査を行った。上記患児の親、すなわち、疾患群および対照群の親、各49名を対象とした。その結果、自己肯定意識尺度の6主成分のうち、「自己実現」、「自己表明」、「自己受容」の3つの主成分について、疾患群の親は対照群の親よりも、わが子の自己肯定意識を有意に低く評定していることが示された。 さらに、疾患群および対照群の親子間の意識の特徴を明らかにするため、疾患群および対照群の親子49ペアの比較検討を行った。その結果から、親は子どもよりも、自己肯定意識の形成に慢性疾患を有することの影響を強く認識していると考えられた。主観的統制感尺度については、疾患群の親子にのみ有意差がみられた。子どもの内的統制感の方が親よりも高いことが示された。疾患群の親は、病気に関連して自己の努力の成果を認識できにくいために、わが子も同様の認識をもっているととらえ、自己肯定意識を低く評定したのではないかと考察した。 また、患児の自己イメージを高めるための心理社会的支援について、小学校、中学校、高等学校の養護教諭62名から、慢性疾患患児に対する支援内容に関する調査を行った。その結果、患児の病気についてどのように教職員間で共有化を図るか、具体的な支援については、医療的ケアを行わないことが前提でありながらも、校内で唯一、医療的知識がある者として、患児、親、教職員、児童・生徒、医療機関とのコーディネートが主な役割であることが明らかになった。米国の場合は、ナースや心理士は主に院内で、ソーシャルワーカーは、学校に出向いて、患児の病状などの説明を含めた心理社会的支援を行う等、役割が分担されていることが現地調査で明らかになった。
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