研究概要 |
■目的 米国ワシントン州ブレマトン市の小学校,およびワシントン州シアトルの小児病院を対象に、慢性疾患(I型糖尿病を取り上げた)患児および保護者に対する心理社会的支援の現状について,学校場面に焦点をあて,米国の実情としてのデータを得るとともに,平成16年度にわが国で行った日本における患児および保護者,養護教諭を対象とした調査結果と比較検討すること。 ■調査対象 発病が小学1年生であった現在小4女児1名の母親,発病後半年の小1男児1名の両親。それぞれに関わるスクールナース各1名,担任教師各1名,スクールナースアシスタント各1名。なお,対象には調査の趣旨を説明し,同意を得た。 ■調査方法 当初,平成16年度にわが国で行った調査と同内容の質問紙調査を実施する予定であったが,わが国の養護教諭と異なり,スクールナース制度のある米国の事情がかなり異なることが明らかになったため,すべての対象に対して,30分〜1時間半の半構成的面接調査を行い,事例研究とした。 ■結果および考察 スクールナースは,わが国の養護教諭のように教育職ではなく,医療職としてのアイデンティティをもっていた。慢性疾患患児への対応としては,病気に対する理解を深めさせることはもちろん,病状の自己管理力を高めさせるよう積極的に教育するとともに,投薬,疾病理解,学校での注意事項などを主治医から文書として提出してもらうよう医療機関と連携をとり,校内における教職員へのスーパーヴァイザーの役割を担っていた。しかしながら,財政上,養護教諭は週1回しか学校への勤務日がなく,一人が数校かけもっていた。その補佐役を務めるのが事務職を兼職とするスクールナースアシスタントであった。学校に医療的知識が取り入れられることは,本人のみならず教職員にとっても安心感へとつながり,患児のすこやかな学校生活を支持することにつながっていることが示された。
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