研究概要 |
本研究は、脊椎の機能障害を持つ患者が希望を抱くための支援を明らかにすることを目的としている。今年度は、人生中途にして脊椎の機能障害を持った患者が希望を抱く過程を、文献や自伝などから明確にすることに取り組んだ。米国においては、脊椎の機能障害を持つ患者が前向きに生きようとする力を希望と捉える研究が増加傾向にあるが、日本においては、障害受容の概念が強く、希望という観点からの研究はなかった。このことは、日本においては障害を「受容しなくてはならないもの」だとする考え方を反映していると考えられる。 患者が未来に対して何らかの期待や希望を抱くきっかけとして共通して見出されたときには、生活範囲が拡大したとき、自己と同様に脊椎の機能障害を持っ患者と接したときであった。また、どの事例においても、時間の経過と自分自身の身体障害の程度を正確に把握することが必要であった。身体障害の程度を正確に把握するためには、医療者からの障害の告知が必要となる。医療者からの障害の告知に関しては、障害を持ってからできるだけ早い時期の方が良いとする考え方、患者が知りたいと思った時が良いとする考え方と様々であった。 生活範囲の拡大として必須となるのは家屋の改造であった。この研究では「希望」を主観的なものとしてだけではなく,環境や対人関係などの客観的な因子を含むものとして位置づけている。家屋の改造は脊椎の機能障害を持ちながら生活する患者にとって重要なものとなることが予測され、次年度は在宅で生活している患者の家屋の改造を含めた生活状況に着目しながら研究を継続していく。対人関係についても、脊椎の機能障害を持つ患者と接することになったきっかけやそのときの感情などを明確にしていく必要がある。 次年度は,さらに脊椎の機能障害を持つ患者への面接を進め、障害が不可逆的なものであるという告知を医療者から受けた時期や生活範囲と生きる意欲の関連を明確にしていく。
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