患者-看護師間の心理的距離を測定する第一段階として、今年度はNurse Attitude Scale (NAS)の信頼性と妥当性を検討した。さらに、心理的距離を投影法にて測定し、それをNASやPines' Burnout Scaleを用いて検討した。 1、Nurse Attitude Scale (NAS)について 精神科看護師189名を対象に行った調査によってNASの信頼性と妥当性を検討した。因子分析では3因子が抽出され、批判、敵意、肯定的言辞と名づけられた。NASのCronbach'αは、全体、下位尺度の批判、敵意で0.8以上であったが、肯定的言辞では0.685とやや低い値であった。NAS再テスト信頼性は尺度全体およびそれぞれの下位尺度において、1回目と2回目の得点には有意な相関(p<0.001)がみられた。Pine's Burnout ScaleとNAS総得点との間には強い正の相関があった。Pine's Burnout Scaleは身体的、感情的、精神的消耗を測定する指標である。精神科看護師のburnoutの程度は、看護師の患者に対しての感情表出のしかたに影響を与え、また強いburnout状態では患者に批判的になりやすい傾向があることが示された。このことから、NASは一定の並存妥当性が示唆された。 2、心理的距離について 現段階で心理的距離についてわかったことは、投影法によって測定した心理的距離はNASとは有意な正の相関があったこと、Pines' Burnout Scaleとは有意な相関が認められなかったことである。また、心理的距離は看護経験年数や精神科経験年数と有意な負の相関があることがわかった。 今後の課題は、NASが精神科看護師のEEを表しているかどうかをFMSSを用いて検討すること。また、逆転移を測定できる指標を開発し、それが心理的距離とどのような関係にあるかを検討することを考えている。
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