研究概要 |
患者-看護師間の心理的距離を研究する第2段階として、今年度はすでに信頼性妥当性を検証したNurse Attitude Scale(NAS)を用いてそれらと心理的距離との関係を検討した。もうひとつは、逆転移を客観的に評価するために開発されたFeeling Checklist英語版を翻訳し、Feeling Checklist Japanese version(FC-J)を作成し、その信頼性と妥当性を検討した。 1、心理的距離を構成する要素について すでに昨年度、信頼性と妥当性を検証したNurse Attitude Scale(NAS)を用いて、心理的距離との関係を検討した。今回は、精神科看護師189名を対象に、患者との心理的距離を構成する要素を検討するために、NAS, Burnout Scale,心理的距離尺度を使用し調査を行った。重回帰分析の結果、NASの下位尺度である「肯定的言辞』とのβ標準偏回帰係数は-0.287(p<0.0001)であり有意な回帰があることがわかった。またNASの下位尺度である「敵意」とのβ標準偏回帰係数は0.146(p<0.1)であり、心理的距離との間に関連がある可能性が示唆された。 2、看護師の逆転移についての客観的な評価 Feeling Checklist(FC)は客観的に病院スタッフの逆転移を評価する尺度で、スエーデンで発展した。今回私たちは原著者の許可を得てFeeling Cheklist Japanese version(FC-J)を作成し、日本の看護師を対象に調査をし、その信頼性と妥当性を検討した。FC-Jの因子構造はFCと似ているところもあったが、相違点もいくつか見られた。看護師が看護している患者の疾患名別に比較した結果では、下位尺度のinvolvementでは人格障害群での点数が有意に高いことがわかった。 今後の課題は、NAS、FC-Jなどを用い、患者-看護師間の心理的距離がどのような構成になっているかを総合的に考察し、より精度の高い心理的距離尺度を作成していく予定である。
|