目的は寝たきり高齢者の下腿・足部の潰瘍の治癒遅滞に関する要因を明らかにし、看護が介入可能なケアを検討することであった。 入院中の65歳以上の寝たきり高齢者30名41個の下腿・足部潰瘍を治癒まで(治癒しないものは発生から3ヶ月まで)定期的に生理学的指標(皮膚温とABI)・血液データ・体圧を測定した。ケア介入は除圧ケア(体圧分散寝具・体位変換)、スキンケア(足部の清潔方法)、栄養ケア(栄養摂取経路・摂取カロリー)、その他追加された場合は抽出した。 結果は、対象の平均年齢は81.2歳で、治癒潰瘍は13個、治癒しない潰瘍は20個、5名8個の潰瘍は3ヶ月を待たずに転院したため転帰は不明となり分析から除外した。両群の比較では、生理学的指標は治癒群の末梢(足趾部)皮膚温が高い傾向にあり、創周囲の皮膚温に25度未満の低温部がないことが特徴的であった。またABIは治癒群の方が有意に大きく平均0.81であった。血液データには差はなかった。また治癒しない潰瘍群は1人で複数個を保有することが多い傾向にあった。 ケアでは体圧分散寝具の種類は差がなかったが、体位保持枕使用個数に差があり治癒群の方が少なかった。スキンケアでは治癒しない群の方が、・靴下着用が多かったが有意な差はなく、清潔ケア方法にも差はなかった。栄養は経腸栄養または経静脈栄養の割合・摂取カロリーに差はなかった。 以上のことより、寝たきり高齢者の治癒を決定する要因は、ケアよりも患者個々の要因・血流状態の良否に左右されることが推察された。また施設では、褥瘡ケアの延長として足部潰瘍のケアを実施していたが、治癒促進のためには新たな方策が必要と考えられた。血流状態を改善することは容易でなく、予防に重点をおく必要があると考えられた。
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