平成16年度は痴呆性高齢者のQOLに関する文献検討を行い、今後の研究における見解を深めた。データベースは「医学中央雑誌」(Web版)により、1993〜2003年の過去10年間の文献を検索した。キーワードは「QOL」「高齢者」「痴呆」「施設」「満足度」を用いた。これらの中から、痴呆性高齢者のQOLに関する動向を把握する上で重要であると考えた24文献より今後の研究の示唆を得た。 痴呆性高齢者数が急速に増加する中、痴呆性高齢者のQOLに関して様々な見解がなされている。痴呆性高齢者の対応は、その生活機能、認知機能に積極的に介入することにより、痴呆そのものあるいは随伴症状や日常生活動作の改善に役立つといわれている。また介護の負担を軽減させることにより、結果として介護者と痴呆性高齢者双方におけるQOLが向上するという側面がある。そのため介護者のQOLを高めることが同時に痴呆性高齢者のQOLを向上させることになると考える。 痴呆性高齢者のQOL評価に関しては、主観的な面を測定するのは困難であり他者の観察に頼らざるを得ないため、施設に入所している痴呆性高齢者は施設スタッフに、在宅痴呆性高齢者は主な家族介護者に依頼して平成17年度よりアンケート調査を行う。 痴呆性高齢者のQOL測定尺度は、米国で開発されたQOL測定尺度を阿部らが翻訳したAD-HRQL-Jを用いて比較する予定である。また家族介護者のQOLについては、当初WHO/QOL-26測定尺度の使用を予定していた。しかし文献からや厚生労働科学研究の「特定疾患のアウトカム研究」班の発表会に参加するなどして情報収集した結果、米国ではすでに広く使用されているSF-36を使用することとした。SF-36は主観的な健康度・日常生活機能を構成する最も基本的な要素を測定する指標として一般的である。 また訪問看護ステーションでの調査を予定していたが、症例数が少ないため今後老人保健施設や在宅介護支援センターに依頼予定である。 「痴呆」から「認知症」へと呼称変更となっているが、本研究申請後であったため本文中は「痴呆」と記載する。
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