国内外の保健・医療・福祉の分野でアートが取り入れられている現状としては、宮崎市でアートを生かした活動を展開している社会福祉法人では、茶園で書を行い自然との調和を目指した活動や、「おむすび作り」を通して地域の方々と食事を通して交流を行う等のアートを広く捉えた活動が行われていた。神戸では「able art」として、障害を持った方々が様々な形式で作成した作品を商店街の店先に提灯のように下げ、市民が買い物の途中で足を止め作品を楽しんでおり、地域の活性に一役買っていた。オーストラリアではケアする人へのケアを提供している団体を訪問し、設立から今の活動内容や課題について話し合い、ケアする人へのケアと、それを社会に広めていく事の必要性が明確になったので、海外レポートしてまとめた。 またいくつかの市町村における介護者を対象とした活動として、介護者同士が集まってお互いの気持ちを語り合う場が設けられていた。しかしこれらの情報を得るために様々な担当課に回された結果、実施されていない、もしくはNPOのような市民団体で行っているが把握されていない、という現状もあった。また実際に介護をしている方と接する機会を持ったが、これまでの道のりと現状を涙ながらに語られるや、介護を家族のみで行い利用できるサービスが分からない、相談できないために辛い思いをした方、医療従事者として仕事の現状と気持ちの葛藤などの貴重な話を聞くことができた。一見、順調に生活しているように見えているケア提供者たちも、自分自身をいたわりきれていない、鬱積したものを抱えている現実が垣間見られた。 以上のことから今後、介護者へのヘルスケア・アートプログラムの実施と継続したシステムの構築に向けて、介護者への調査実施と、地域において介護者も共に利用できる催しやサービスなどを継続して視察し、まとめていく必要性が示唆された。
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