申請者は民生委員に対して、在宅精神障害者とどのような関わりがあるのかについてインタビューを行っている。これまでの結果から、地域で精神障害者に関わったことがある民生委員は少なく、また特に精神障害者への対応の困難を抱えていることがわかった。そのため今年度は在宅精神障害者に関する民生委員の活動として先駆的な試みを行っている、A地区の民生委員8名にインタビューを行った。A地区は民生委員に対して精神障害者に関する講座を設け、その中で講義や実際に精神障害者と接する機会を設けたり、精神障害者に関するビデオを作製する等、積極的な活動を行っている。精神障害者に対する漠然とした不安を抱える民生委員は少なくないが、その中でも実際にケースとして接する機会があったり、上記のような講座を受講する、もしくはボランティアとして日ごろから精神病院へ出入りする等、直接的な関わりをもつ体験があった民生委員からは、精神障害者との関わりへの前向きな発言が多く見られた。一方講座を受講しなかったり、自分が精神障害者を担当するのがはじめてだった民生委員等からは、専門家のアドバイスがほしい、自分だけは抱えきれない等の発言がみられた。民生委員を支援することが地域で暮らす精神障害者を支援することにつながるため、今後は民生委員を支える専門家としての保健師や行政の役割を検討することが急務であると考えられた。 地域で精神障害者を支えるという点では、世界的にみるとイタリアが唯一全土において精神病院を廃止し成功している。地域で精神障害者を支える身近な相談者としての民生委員の活動を検討するために、イタリア精神保健局、デイケアセンター、精神科救急病床、グループホーム、精神保健センターの5ヶ所において看護師とのディスカッションを行った。精神障害者の再発を防止するためには、具合が悪くなる前の予防的介入が重要であり、日本における民生委員の早期介入の可能性が期待された。
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