昨年度は、終末期認知症高齢者を対象として療養病床(介護保険対応)1施設における介入調査を実施した。まず、具体的介入前に、対象病棟に入院・入所している施設利用者の口腔内および身体機能のアセスメントを実施し、口腔ケアに関する現状の問題点を明らかにした。調査として、口腔内の生理的状態(口腔疾患調査、口腔内水分率、唾液量など)、心身機能(N-ADL、NMスケール)、咽頭部細菌培養検査などを2004年10月と2005年3月に実施した。11月以降、調査結果を受けて、口腔ケア介入を実施した。適宜、施設スタッフ協力者と情報交換をしながら口腔ケアの症状緩和における効果について検討を行った。この病棟の対象者の特徴として認知症が11月80%、3月90%であり、9割がFASTスケール7段階の終末期認知症、肺炎の既往があるものが9割を占めていた。口腔内の状況は経口摂取者が3割程度、ほとんど歯がない者が6割を占め、日常的に義歯を利用している人は1割だった。また、口腔内の重度乾燥状態を示す者が4割であった。 ケアスタッフによる対象者の口腔ケアの困難点は、多くが認知症により意思の疎通が困難なためのケアヘの抵抗や強い筋緊張による介護の難しさがあがっていた。介入期間中、口腔ケアに必要な物品提示、コンサルテーションを研究者および歯科専門家が具体的に行ったことで、今まで病棟全体で画一的に行われていた口腔ケアを個別に対応する必要性がケアスタッフに徐々に浸透し、用具の選択やケア方法に幅が出来た。また、プライマリーケアスタッフが口腔ケアに関する個別の具体的な観察視点を提示できるようになったことが示された。
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