研究概要(研究目的、研究方法、研究成果等を記入する。) 【研究目的】高齢者を対象とした看護において、一般病棟勤務看護者が抱く倫理的ジレンマの概要を明らかにして研究者の先行調査・研究結果と比較し、倫理的ジレンマに対する対応策を考察する。16年度は、高齢者看護において看護者が抱く倫理的ジレンマの概要を明らかにした。 【対象と研究方法】高齢者に看護を行ったことのある看護者205名(協力の得られた関西圏下にある一般病棟勤務看護者)を対象とし、自記式にて質問紙調査を行った。調査用紙の概要は、看護者自身の個人的情報と、高齢患者を対象に看護を行ったときどのような倫理的ジレンマを感じたかを自由記載をしてもらった。 【調査期間】平成16年4月〜平成17年3月である。 【分析】調査用紙の量的データは、SPSS11.0Verを用いてデータ整理・加工を行い、自由記載については富士通:トレンドサーチ(非構造のテキストデータからテキストマイニングを行い、独自のキーワードアソシエーション、コンセプトマッピングなどの画面にビジュアル表現することにより、単語の出現頻度や単語間の相関を直感的に把握することができる)を用いて、用語間の関係を図示化した。 【研究成果】調査用紙の総配布数は205部でそのうち回収数は159部、回収率は77.1%であった。対象者の基本的属性として性別は、女性149人(93.7%)、男性5名(3.1%)、看護師は111名(69.8%)、准看護師は6名(3.8%)、保健師・助産師を商方持つ看護者は13名(81.8%)であった。高齢患者に看護を提供する中でジレンマを感じたことのある対象者は131名(86.2%)と高率を示した。そのジレンマの内容「高齢患者の身体の安全確保時」「高齢患者のQOL尊重時」「高齢患者への治療時」「高齢患者の意思尊重・代弁時」「認知症を有する高齢患者に看護する時」「先輩看護職または上司(師長等)医師との間での意見対立」「緊急性のある患者と高齢患者との看護業務の中における優先順位」の7項目とジレンマの有無との関連を明らかにするため、X^2検定を行った。その結果「高齢患者の身体の安全確保時」(p<0.001)、「高齢患者のQOL尊重時」(p<0.05)、「高齢患者への治療時」(p<0.01)、「認知症を有する高齢患者に看護する時」(p<0.001)、「先輩看護者・上司(師長等)・医師との関係」(p<0.05)、「緊急性の高い患者や看護業務内での優先順位」(p<0.001)の6項目において有意な関連がみられた。そしてジレンマの概要を把握するためそれぞれの項目における自由記載をトレンドサーチにて用語間の関係をマッピングしたところ、最も回答が多かった「高齢患者の身体の安全確保時」では、<転倒・危険行為・柵>と<抑制帯・ルート・安静・不穏>、「認知症を有する高齢患者に看護する時」では<忙しい・分かる・業務・訴える>と<対応・頻回コール・俳徊・言葉>とそれぞれ2つの大きなカテゴリがマッピングされた。 【まとめ】一般病棟勤務看護者は、高齢患者に看護を提供する際、「高齢患者の身体の安全確保時」「高齢患者のQOL尊重時」「高齢患者への治療時」「認知症を有する高齢患者に看護する時」「先輩看護者・上司(師長等)・医師との関係」「緊急性の高い患者や看護業務内での優先順位」に関するジレンマを感じていた。またマッピングの結果より具体的状況が明らかとなり、これらの点において看護者へのジレンマ解決サポートの必要性が示唆された。
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