研究課題
本研究は、中期更新世のレス・古土壌層の磁気分析に基づいて中国レスとヨーロッパレスの詳細な層序対比を行い、ユーラシア大陸内陸部における更新世前期-中期境界付近の詳細な気候変化の解明が主目的である。また、サブテーマとして千葉セクションの海成層、青森県の津波堆積物の研究も行った。分析したレス・古土壌試料はハンガリーの首都ブダペストの南150kmにあるPaksのドナウ川右岸に露出する地層から採取した。予察的試料として厚さ16mの地層から2015年にまず高さ10cm間隔で定方位ブロック試料を採取し、2016年に地磁気逆転境界付近を狙って2-5cmの高密度間隔で定方位試料を採取した。主な成果は以下のとおりである。(1)Paksのレス・古土壌層の帯磁率異方性(AMS)と粒度に相関があることを見つけ、ダスト堆積後のAMS変化のモデルを提唱した。この成果は国際誌Aeolian Researchに公表した。(2)Matuyama-Brunhes地磁気極性境界(MBB)がPaks古土壌層PD2の中央付近に位置することを明らかにした。また、降水量変動とMBBの層序関係は中国黄土高原Lingtaiの記録と整合的であることを明らかにした。この成果はヨーロッパレスにおける最初の高精度磁気気候層序の価値ある成果であり、現在投稿論文を準備中である。(3)サブテーマの青森県太平洋沿岸の津波堆積物の磁気分析では、2011年の東北地方太平洋沖地震による津波が上陸し内陸へ侵入していく過程の津波堆積物の磁気構造の変遷を明らかにし、国際誌Marine Geologyに公表した。(4)もう一つのサブテーマである千葉セクションコアの研究では、太平洋と北大西洋における更新世前期-中期境界付近の千年―百年スケールの古気候・古海洋変動を明らかにした。この成果は、国際誌Scientific Reportsに公表した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Aeolian Research
巻: 30 ページ: 20-30
Marine Geology
巻: 387 ページ: 85-96
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 10036
doi:10.1038/s41598-017-10552-2