2018年4月から9月の間に、これまでの成果を踏まえて、「方法としてのシャーマニズム」の普遍性について検討するとの意図からアンダソヴァ・津田を中心に関連分野の研究者を加えて2回の研究会を開催した。その内訳は、アンダソヴァ・マラルが「即興性と意味の複層性―カザフのアイティス〈歌の掛け合い〉の事例から」、受け入れ先の和光大学の坂井弘紀が「中央アジアのシャマンの語りと叙事詩について」とのタイトルで発表し、討議を行った。前者は、神話の分析にナラトロジー(語り論)の方法を導入したここまでの研究の延長上で、アンダソヴァの母国カザフスタンで現に行われているに即吟詩人(アクン)たちの歌の掛け合いを語り論的に分析し、その即興性と意味の複層性を明らかにした。後者は、中央アジアに伝わる神話は節を付け楽器の伴奏に合わせて歌われる神話(叙事詩)であるとの事実から始めて、それが歴史的にはシャマンの語りに出自し、その詞章の随所にシャマンの痕跡が見られることを明らかにした。 本研究はもともと『古事記』など日本古代の神話を伝えるテキストの分析に出発し、その終盤には、このように対象をより広げて中央アジアの神話とその「語り」の器としての歌(節をもった語り)の分析にも適用できることを明らかにした。なお、この研究展開により、アンダソヴァがカザフスタンに資料調査のための短期出張を行った。これらの成果は順次論文化される予定である。 また、アンダソヴァが、この二年間の研究成果をもとに、論文「「サヰ河」の音 神武天皇の結婚歌をめぐって」を執筆・投稿し、日本文学協会『日本文学』2019年2月号に掲載された(査読あり)。
|