研究課題/領域番号 |
16F16007
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
森 浩一 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院, 第三診療部長 (60157857)
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研究分担者 |
A RONGNA 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所感覚機能系障害研究部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | スピーチ・シャドーイング / 日本語学習 / 非流暢性 / DTI / 吃音 / 調音(発話)速度 / 脳神経線維 / 安静時脳活動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、吃音者(発話に非流暢性が頻繁に生じる障害)と日本語学習者(語習熟度が未熟さにより非流暢性が生じる)を対象に、シャドーイング(音声を聞きながら、同じ発話を口頭で繰返す行為)訓練を自宅で短期集中的に行い、その効果を多方面から検証することである。平成29年度に得られた成果は以下の通りである。 1.日本人吃音者5名を対象に自宅で短期集中的シャドーイング訓練を実施した。訓練の前後には、吃音検査法による非流暢性の頻度の評価と各種質問紙による心理学的指標を評価した。その内、発話および心理面で著しく改善が見られた1症例の結果を、日本音声言語医学会で発表した上、症例論文として投稿し採択された。 2.日本語学習者の研究協力者を募集しやすいように、他の大学と共同研究を開始した。これまでに日本語学習者20名を対象に、1ヶ月間1日10分程度のシャドーイング訓練を実施した。共同研究先の大学の教員たちが週に一回、日本語学習者がシャドーイング訓練を正しく遂行していたかどうかを確認するフィードバックを行った。 3.非侵襲的に磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging, MRI)装置で撮像する、安静時の脳活動であるデフォルトモードネットワークおよび拡散テンソル画像(diffusion tensor image, DTI)による大脳白質の神経線維の接続経路や体積を検出する実験パラダイムを構築した。構築したMRI実験のパラダイムを吃音者3名と日本語学習者17名のシャドーイング訓練前後に実施した。 4.吃音者と非吃音者の音読およびシャドーイング中の調音速度(ポーズを除く発話速度)を計測し、吃音者の音読中の調音速度が非吃音者より遅いものの、シャドーイング中では差がないことを明らかにした。また、吃音者の音読における調音速度とポーズの数に負の相関があることが明らかになった。これらの成果を学会誌に投稿するための論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通りに、吃音者および日本語学習者を対象に短期集中的シャドーイング訓練を実施した。その上、所属研究室の蓄積してきたノウハウを活用し、MRI実験のパラダイムを構築し、遂行している。外国人日本語学習者20名分の行動データとMRIのデータを取得した。査読の上、学会誌に症例論文が掲載されることが決定した。
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今後の研究の推進方策 |
1.吃音者、日本語学習者を対象に行った実験データを分析する。 2.MATLABやSPMなどの解析ツールを用いて、これまでに収集したMRIデータの解析を行う。 3.収録したシャドーイングおよび音読中の音声データを分析する。主に、非流暢性の頻度・タイプ、調音または発話速度、韻律的特徴(特にアクセントとイントネーション)の自然性などを評価する。 4.研究成果を国内外の学会で発表し、論文執筆を行う。
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