研究課題/領域番号 |
16F16031
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩渕 弘信 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80358754)
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研究分担者 |
ZHANG FENG 東北大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-07-27 – 2018-03-31
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キーワード | 衛星観測 / 放射伝達 |
研究実績の概要 |
雲と降水の微物理過程を含めた雲降水系の発展の理解は,気象・気候モデルにおける雲降水の微物理のパラメータ化の重要な鍵となっている。本研究では,静止気象衛星による可視から赤外の観測を用いて,強い雨をもたらす深い対流系のライフサイクルに関する研究を行っている。静止気象衛星ひまわり8号による可視から赤外のデータを解析するため,今年度は太陽放射用の高速かつ高精度な放射伝達モデルの開発に取り組んだ。球面調和関数展開による4流近似に1次散乱補正を加えた,太陽放射用の放射伝達モデルの開発に取り組んでいる。2流近似に変分法による補正を加えて高速かつ高精度な赤外放射伝達計算が実現できる事を示した。今後,太陽放射の大気上端放射輝度とそのヤコビ行列を高速かつ高精度に計算する前方計算モデルを完成させ,現在の雲解析アルゴリズムを改良する計画である。可視と近赤外のバンドを解析に用いることで,より確度の高い多層雲と単層雲の識別,水と氷の判別,多層の場合の上層雲と下層雲の特性抽出が実現できると期待される。これは,将来的にはひまわり8号のデータを気象学の研究への利活用や気象災害減災のための応用する可能性を広げると考えられる。 また,今年度は米国南部の旱魃の観測データを解析し,太陽活動の影響が認められる事を示し論文として公表した。研究成果は投稿論文2本に公表したほか,現在投稿中の論文が2本あり,大きな研究実績をあげられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ひまわり8号の可視から熱赤外までの多バンドを同時に用いた雲解析手法を開発するため,太陽放射用の高速かつ高精度な放射伝達モデルの開発に取り組んだ。2流近似に変分法による補正を加えて高速かつ高精度な赤外放射伝達計算が実現できる事を示し,論文として公表した。これは,放射伝達モデルの基礎研究と位置づけられる。現在は,球面調和関数展開による4流近似に1次散乱補正を加えた,太陽放射用の放射伝達モデルの開発に取り組んでおり,光学的に厚い雲では十分な精度が示されている。現在さらに改良を進めている。また,近年開発された2つの時系列データから因果関係を定量化する手法を米国南部の旱魃の観測データに適用し,太陽活動の影響が認められる事を示し,論文として公表した。平成28年度は,投稿論文2本を公表したほか現在投稿中の論文が2本あり,大きな研究実績をあげられた。
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今後の研究の推進方策 |
太陽放射の大気上端放射輝度とそのヤコビ行列を高速かつ高精度に計算する前方計算モデルを完成させる。これを現在の雲解析アルゴリズムに組み込み,より確度の高い多層雲と単層雲の識別,水と氷の判別,多層の場合の上層雲と下層雲の特性抽出を可能とする。深い対流系の寿命,対流雲系全体と対流コアのサイズ,降水強度との関係やそれらの時間的な変遷の様子を捉えるための手法を開発する。これらの手法をひまわり8号のデータ解析に用い,東アジア域において豪雨をもたらした事例について雲系の発達から消散までを連続的に追跡して深い対流系のライフサイクルを調べる。時間発展と空間分布の特性を雲タイプ別に明らかにする。
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