雲と降水の微物理過程を含めた雲降水系の発展の理解は,気象・気候モデルにおける雲降水の微物理のパラメータ化の重要な鍵となっている。本研究では,静止気象衛星による可視から赤外の観測を用いて,強い雨をもたらす深い対流系のライフサイクルに関する研究を行っている。静止気象衛星ひまわり8号による可視から赤外のデータを用いて雲の特性を推定する手法を開発するため,太陽放射および赤外放射用の高速かつ高精度な放射伝達モデルの開発に取り組んだ。雲のリモートセンシングにおいて雲の鉛直不均質性を考慮することが重要であることがわかったため,雲内の鉛直不均一性を考慮した新しい放射伝達解法を太陽放射および赤外放射用それぞれについて提案した。計算時間は従来の手法と大きくは違わないため,高速かつ高精度の計算が可能となった。衛星データ解析により,氷雲の鉛直不均質性を経験的にモデル化し,雲解析システムに組み込んだ。これを用いて「ひまわり8号」の高頻度観測データの解析を行った。熱帯域の典型的日変化として,陸上では12地方太陽時(LT)から対流雲の発達が始まり,18時LTに最も発達し,15~24 LT頃に巻層雲や巻雲などの上層雲が広がるということがわかった。
研究成果は投稿論文2本に公表したほか,現在査読中の論文が1本あり,大きな研究実績をあげられた。開発した計算モデルを雲解析アルゴリズムに組み込む事で,対流雲のライフサイクルを捉える研究に発展するものと期待される。
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