活性炭やゼオライトと呼ばれる従来の多孔性材料に次ぐ第三の材料として、有機物と金属イオンからなる「多孔性配位高分子(PCP)」が非常に高い注目を集めており、現在この分野の年間論文数は2000報を超える。その中でも 受入研究者は世界に先駆けて「多孔性配位高分子」の細孔構造と吸着能に注目することで、ガス吸着能を示す化合物の合成に 1997 年に世界で初めて成功し、この分野を一大領域へと発展させた。これら材料は、二酸化炭素や水素といった環境・エネルギー問題において非常に重要なガス分子の吸蔵・貯蔵・分離への応用に向けて非常に重要な材料であると世界中で注目されており、世界最大の化学会社である BASFも積極的に分野に参加し、いく つかの化合物は市販されるまでに至っている。 しかしながら、PCPは結晶性固体であり不溶であるため、合成後に様々な形態にプロセッシングしたり、物性を変 化させることが困難であった。そこで、PCPの有する最小細孔単位であると考えられる、内部に空間を有するケージ 型分子、金属錯体多面体(Metal-organic polyhedra = MOPs)を用いた新しい化学を展開することにより、様々な物理刺激に応答して物性を変化可能な新しい多孔性金属錯体の創製を目指した。MOPs は分子であり、その集合状態は弱い分子間相互作用のみに依存していることもあり、様々な多形が存在しうる。それを利用した溶媒を用いたプロセッシングにより、同じ分子にも関わらず、集合状態を変化させることが可能であり、また細孔物性に大きく影響 することを明らかにした。
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