研究実績の概要 |
我々の日常生活は、太陽光であれ室内灯のような人工光であれ、光に満ち溢れている。環境光というユビキタスなエネルギー源から、得られるエネルギーが仮に微小でも、気軽にまた高効率に、しかも必要なときに発電できればその利点は大きい。我々は最近、有機光電セルにおいて巨大過渡光電流を発見した。我々は、さまざまな実験事実に基づき、巨大過渡光電流の起源を「電極界面の高効率電荷分離とバルク分極の相乗効果」と結論し、この発生に特化した[電極1(M)|電荷分離層(S)|絶縁分極層(I)|電極2(M)](以降、MISM光電セルと呼ぶ。)なる光電セルを提案した。電荷分離層で発生したキャリアが絶縁分極層を分極させ、この分極が電荷分離層での光電荷分離をさらに助長する相乗効果がある。 MISM光電セルを用いたエネルギー変換には、電荷分離層の強い光吸収や効率的な電荷分離が非常に重要となる。そこで我々は、層状ペロブスカイトを電荷分離層として採用し、絶縁分極層としてのイオン液体と組み合わせることでMISM光電セルを試作した。チョッパーで変調(50 Hz)された疑似太陽光から生じる交流電流と電圧を計測することによって、解放端電圧= 0.53 V, 短絡電流= 4.44 mA cm-2, Fill factor= 41.64% が得られた。変換効率は、変調周波数を上げると3%ほどに達し、期待通り大きな交流電流が発生することを見出した。我々は、エネルギー源として室内光も想定しているが、たとえばインバータ制御の蛍光灯は数十kHzで点減している。微弱なエネルギーではあるが、このような光源からもエネルギー得られること突き止めている。
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