前年度までに、(1)水素結合部位を4カ所有するポルフィリン誘導体がメチルシクロヘキサン中において強く自己集合し非常に高い核形成温度を示すこと、(2)核形成温度は、良溶媒であるトルエンを系中に添加することによって、段階的に低下させる事ができることを見出し、(3)自己集合プロセスの熱力学パラメータを決定することに成功していた。これらの成果を利用して、本年度は自己集合挙動のコントロールを検討した。具体的にはcrystallization-driven self-assembly(CDSA)の概念を超分子ポリマーに適用し、 精密超分子重合を検討した。その自己集合能を吸収スペクトル測定や原子間力顕微鏡観察によって評価することにより、リビング超分子重合が達成されていることを明らかにした。また、中心金属の異なるポルフィリン誘導体を合成し、CDSAの概念を利用したブロック共重合体の合成が可能となることを見出した。その熱あるいは化学物質安定性が、ブロック共重合体の組成に大きく依存していることが明らかとなった。 上記の研究を展開している際に、中心金属に亜鉛を有するポルフィリン誘導体の1次元超分子ポリマーが、軸配位子の添加によって解重合し、その後、2次元超分子ナノシートへと形態転移することを発見した。解重合と形態転移は連続的に起こるが、それぞれのキネティクスはポルフィリンと軸配位子の濃度に依存することがわかった。時間発展現象を解析することによって、解重合や軸配位、形態転移プロセスの速度定数を見積もることに成功した。この現象は、基盤上でも進行する。反応拡散系へと展開することによって、自己組織化的なパターン形成を期待できる。
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