研究課題/領域番号 |
16F16060
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 政宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (10466857)
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研究分担者 |
ANUFRIEV ROMAN 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | フォノン / フォノニック結晶 / フォノンエンジニアリング / 熱伝導 |
研究実績の概要 |
本研究は、ナノスケール構造中で顕著になる熱フォノンの波動性および弾道性を利用することにより、バルクでは実現できない物理を探索し、制御することを目的として行っている。 弾性論を用いた半導体ナノ構造の機械振動モード解析によって、熱フォノン輸送をシミュレートした。適切な厚さの薄膜に二次元フォノニック結晶パターニングを行うことで、薄膜よりも熱伝導率を高めることができ、三角格子が最も高い増強効果を示すことを明らかにした。希釈冷凍機を用いた実証実験に向けて、継続的に立ち上げ作業を進めている。半導体-絶縁体-金属-絶縁体-半導体からなるジョセフソン接合マイクロヒーターを設計し、作製中である。 また、熱フォノンの弾道性を積極利用することで熱流に指向性を持たせることが可能であることを発見した。シリコンの薄膜に正方格子状に整列した直径約150 nmの円孔を形成すると、その隙間を縫うように熱フォノンが通過する。これにナノワイヤー構造の結合/非結合構造の二種類を用意して熱散逸時間を比較したところ、結合構造においてより早く熱散逸が起こることから、熱流に指向性を持たせることが可能であると証明できた。続いて、ナノ構造を放射状に配置することで、熱流を一点に集めることが可能なことを初めて提案、実証した。これは、固体物理学においてはじめて集熱のコンセプトを提案、実証したマイルストーン的成果であり、Nature Communicationsに掲載され、プレスリリースも行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新奇物理探索で、指向性を持った熱流の実証、固体集熱の実現を行い、ハイインパクトジャーナルに掲載される大きな成果を得ることができた。そのため、当初計画を大幅に上回る成果を既に得ることができた。希釈冷凍機を用いた極低温実験に向けた準備は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き希釈冷凍機の立ち上げ作業と極低温実験で用いる試料の作製を進める。また、モンテカルロシミュレーションおよび弾性論を用いたシミュレーションを用いて、フォノニック結晶ナノ構造における新奇物理探索を続け、シリコン薄膜をベースとしたフォノニック結晶ナノ構造による熱伝導制御技術の開発を進める。
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