Li-S電池は、理論電気容量が高く、低コストであるため、将来の電気自動車、大型固定エネルギー貯蔵装置、およびスマートグリッドのための電池として有望視されている。しかしながら、Li-S電池の実用化に向けて2つの課題がある。一つは硫黄の e-/Li+絶縁性、もう一つは、最終放電生成物であるLi2S2 / Li2Sおよび中間生成物であるポリスルフィド(Li2Sx)の溶解性である。その結果として、硫黄利用効率が低くなり、容量が急速に減少する。したがって、正極あるいは正極とセパレータ間の中間層として、高いe-/Li+導電性を有したポリスルフィドバリア材の開発が必要である。 本研究では、Li-S電池の正極から放出されたポリスルフィドを取りこみ再利用するため、新規な正極/セパレータとしてマクロ孔/メソ孔Co-N-Cコンポジットを提案した。電気化学測定により、多層カーボンナノチューブと硫黄を複合化させたMWCNT/S-70 wt%を修飾したセパレータを用いると、非常に高い初期放電容量(0.2 C 条件で1406 mAh g-1、1 C条件で1203 mAh g-1)を示し、また、クーロン効率は100%であった。100サイクル後も828.4 mAh g-1 (1 C)と高い可逆容量を示した。Co-N-C界面にはLiと親和性が高いNサイトおよび硫黄と親和性の高いCo-N結合種が多く存在する。これらのサイトはN-Li-SおよびS-Co種を形成し、熔解したポリスルフィドの高い吸着容量と吸着速度を可能とする。Co-N結合のCoイオンのサイトは、取り込んだポリスルフィドの可逆的レドックス反応を促進させる。これらの結果より、マクロ孔/メソ孔Co-N-C修飾セパレータが将来有望なLi-S電池として期待できる。
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