研究課題/領域番号 |
16F16065
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梶原 優介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60512332)
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研究分担者 |
WENG QIANCHUN 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / ナノスコピー / パッシブ計測 / エバネッセント波 / 非平衡現象 / ホットエレクトロン |
研究実績の概要 |
本年度はGaAs/AlGaAs二次元電子系における非平衡現象観測を目的として研究を進めた.まず,GaAs/AlGaAs二次元電子系を持つウエハの設計を行って結晶成長を依頼し,必要なウエハを取得したのち,メサエッチングを利用して二次元電子系の狭窄部(数10nm程度の幅)を作製した.作製した狭窄部に対して,両サイドから交流バイアスを印加して変調電流を発生させ,その電流による電子の振舞いを,パッシブ型のTHz近接場顕微鏡を用いて観察した.パッシブ型近接場顕微鏡では,20nmの曲率半径を持つタングステンの先鋭探針の先端において物質のダイナミクスを反映したTHzエバネッセント波を散乱させ,超高感度THz検出器CSIPにて信号検出を行った.当該実験では,二次元電子系の狭窄部において電子密度の増大に起因するホットスポットが確認できた.さらに当スポットはバイアスの極性に依存する(つまり,溶極側にスポットがシフトしている)ことが確認されており,本信号の要因が熱揺らぎによるものではなく,狭窄部における電子の振舞い(おそらく,ホットエレクトロン)に起因するものであることが分かった.従来,ホットエレクトロンなどの現象は,発生部両端に電極を付けておき,その電流変化などを確認することによってマクロに追うことができるのみであったが,本結果は,ホットエレクトロンの分布などといった非平衡現象が,ナノスケールの分解能で局所的に可視化できるという非常に有意義な結果となっている.本結果に関しては,論文を投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の最大の目標である非平衡現象観測について,その端緒となる結果が得られ始めており,今後の進捗が大いに期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
GaAs/AlGaAs二次元電子系においてホットエレクトロンが発生していることをより明確にするため,外部磁場を印加してホットスポットがどのようにふるまうかをまず確認する予定である.また,同様に二次元電子系を持つグラフェン狭窄部についても,共同研究先の東北大学から入手しており,当試料を用いて非平衡現象観測を目指す.
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