研究課題/領域番号 |
16F16066
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 拓男 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, チームリーダー (40283733)
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研究分担者 |
BALOIS MARIA VANESSA 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | メタマテリアル / 反射分光法 / 電磁場モデリング |
研究実績の概要 |
シリコンチップや金属など不透明な試料を観察するために,試料からの反射光を効率良く検出できる側面照射・検出型近接場顕微鏡システムの設計と構築を行った.レーザー光は全て光ファイバーを用いて導入できるように設計することで,光学調整ならびにレーザー光の波長の変更が容易にできるようにした.そして,ダイヤモンド窒素-空孔中心を原子間力顕微鏡のシリコンカンチレバーの先端に取り付けた特別なプローブを作製してシステムに導入した. 側面照射・検出型近接場顕微鏡システムにおける最適な入射角を求めるために,FDTD法とMathematicaを用いた数値計算シミュレーションを実施した.対物レンズの開口数,レーザーの波長,ターゲットとなる試料の条件を元に計算モデルを構築した.計算の結果,直線偏光がカンチレバーに照射されている条件では,入射角を30~60度の範囲に設定するのが適切で,この場合基板にシリコンを用いた場合は100倍程度,金をコートしたガラス基板を用いた場合は1000倍程度の信号増強が得られることがわかった. 計算結果をもとに,光の入射角を60度に設定した.Mathematicaを用いた計算では,入射角60度におけるチップ先端の三次元的な電場強度分布を可視化することで,斜入射照明に起因するレーザースポットの楕円率を評価した. 試作したシステムが設計通りに動作するかどうかを確認するための評価実験を行った.システムの安定性を評価するために,正方格子状のクロムパターンを連続的に走査して観察した.その結果得られた観察像は試料の構造を正確に反映していることが確認できた.さらに,側面照射・検出の特性を評価するために,シリコンナノワイヤを観察した.その結果,シリコンからのラマン散乱信号は検出できたが,さらなるS/N比の改善のためにラマン信号の検出効率を高める必要があることが明かになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進展している. 試作した装置では,さらなるS/N比の改善のためにラマン信号の検出効率を高める必要があることが明かになったが,これは光学素子の改善とレーザー光ならびに検出光導波用の光ファイバーの結合効率等の改善により解決できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は,最初の3ヶ月で二次元メタマテリアルの特性評価に関する実験を完了させる.その後半年をかけて,三次元メタマテリアルのデザインと試作,ならびに試作した側面照射・検出型近接場顕微鏡を用いた特性評価実験を行う.二次元メタマテリアルと同様に,三次元メタマテリアルの設計もFDTD法やFEM法を活用する.設計した三次元メタマテリアルを実際に試作し,その三次元的な磁気応答特性を側面照射・検出型近接場顕微鏡で観察・評価する.さらに三次元メタマテリアルの温度応答特性についても評価する.研究期間の残りでは,得られた結果の解析と現象の物理的解釈を行い,学術ジャーナル誌への論文投稿と国際会議での発表に繋げる.そして,学振外国人特別研究員としての研究内容を総括する.
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