研究課題/領域番号 |
16F16076
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
徐 超男 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 総括研究主幹 (70235810)
|
研究分担者 |
TU DONG 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
キーワード | 応力消光 / 応力発光 / 光スイッチ |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、新規機能性材料である応力消光体(CaZnOS:Cu)の研究開発を進めてきた。応力消光体(CaZnOS:Cu)は、残光の減衰時間の変化に関して、Cuの低濃度領域では、応力負荷により、応力消光から応力発光へと変化し、Cuの高濃度領域では、応力発光から応力消光へと変わる特異な現象を示すことがわかった。この現象を解明するため、他の遷移金属(Mn、Agなど)をドープした材料を新たに合成した。その結果、CaZnOS:Mnは応力発光を、CaZnOS:Agは応力消光を示すことがわかった。 さらに上記の研究を進めていくことで、残光寿命を新たな評価要素として導入し、CaZnOS:Cuの応力消光の性能を分析した。これにより、応力消光の原理が解明され、効果的な電子トラップ制御も可能となった。この研究成果は、応力消光体の開発のみならず、全ての蛍光体の基礎研究、および、効率向上に対しても重要な手がかりとなると予想される。 また、開発された応力消光と応力発光の両機能を有する材料の応用例としては、光メモリ、光ストレージ等の開発も可能となり、独自の応力発光技術と応力消光技術を組み合わせることによって、光調整可能な新規光スイッチの創出の可能性が期待される。 将来的には、この新しい光スイッチの機能性を利用して、精密加工機器や医療機器のフィードバック制御、ならびに、航空機や高速鉄道車両等の応力負荷箇所において、新規な計測手段として使用されることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、応力消光と応力発光の技術を組み合わせ、機械的に誘起された新しい光スイッチを開発するとしている。具体的には、(1)新規応力消光材料の開発、(2)応力消光の原理分析、(3)光スイッチの創出である。新規応力消光材料の開発において、これまでに唯一の応力消光材料としてCaZnOS:Cuを開発した。また、遷移金属イオンAgを半導体材料CaZnOSの中に導入すると、応力消光の現象を示すことが発見された。更に、残光寿命を評価要素として導入し、CaZnOS:Cuの応力消光の性能を分析した。CaZnOS:Cuの残光寿命は応力消光強度と異なり、多重応力負荷に対して安定的である。残光寿命と応力発光強度とを組み合わせると、高精度の応力センシングとフィードバック応力測定ができる。また、進捗にともない、無閾値の高感度な応力発光材料LiNbO3:Pr3+を開発できた。100μst以下の応力でも十分な応力発光強度が観測される。この研究成果は単細胞イメージングや低歪み応力探知等に応用可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
1.Cu高濃度材料とCu低濃度材料に関して、まず、シンクロトロン光を用い、結晶の精密構造解析を行い、Cuイオンの配位状態を解析する。そして、同じシンクロトロン光を用いて、EXAFSやXANES等によりCuイオンの局所構造を解析する。さらに、応力消光に関するエネルギー遷移の状態の理論計算も行い、応力発光と応力消光のメカニズムの解明を行う。 2.開発された材料を用いて、応力負荷により発光と消光を行う光スイッチのデバイス作成を行う。
|