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2016 年度 実績報告書

メタバーコーディングとメタゲノミクスを用いた生物多様性と食物網機能の研究

研究課題

研究課題/領域番号 16F16092
研究機関京都大学

研究代表者

本川 雅治  京都大学, 総合博物館, 教授 (30293939)

研究分担者 HE KAI  京都大学, 総合博物館, 外国人特別研究員
研究期間 (年度) 2016-10-07 – 2019-03-31
キーワード哺乳類 / DNAバーコーディング / 生物多様性 / 真無盲腸類 / 同所的分布 / 種分化
研究実績の概要

メタバーコーディングとメタゲノミクスの手法を用いて,同所的に分布する真無盲腸類(食虫類)の食性と腸内微生物相の解明を目指して研究を進めた.昆虫類などを補食する地表・地中性小型哺乳類である真無盲腸類に着目し,本州中部地方の長野県の1つの地点においてほぼ同所的に分布する10種を捕獲し,それらの垂直分布やマイクロハビタットの違いを調べ,分布の同所性,同位置性について明らかにするとともに,その種内・種間関係について考察した.本研究により,これまでに知られていたよりも多くの種が一つの山に分布していることが明らかになり,当初計画よりも詳細な分布解析を進めることができた.また,当初計画には無かったが,比較のために真無盲腸類の分布種構成が異なる北海道においても同様の捕獲調査とサンプル収集を行い,調査した一つの地域でほぼ同所的に分布する3種を解析した.当初計画よりも多い種を研究対象とすることになった一方で,同所的に分布する種間で形質置換などが生じていて,従来の文献からの正確な種同定が困難なものもあったために,まず遺伝子解析によるチトクロームb領域の塩基配列を用いたDNAバーコンディグによる種同定と種間の関係について調査した.遺伝子実験設備の整備を進め,同位体分析や食性分析を進める予備的実験を開始した.研究成果については学内のセミナーや国内学会,国際動物学会議などで発表して,国内外の関連分野の研究者と議論し,その内容を研究にフィードバックした.分布変遷や地理的分化,体サイズの変異,同所的種分化に特に着目して,新たな研究発想につなげることができた.そうした成果について,現在国際学術雑誌に論文執筆を進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究では同所的に分布する真無盲腸類について当初想定したよりも多くの種と個体数を得ることができ,さらに垂直分布や同所性について,より複雑なパターンが見られることが明らかになった.このため,野外調査と分布解析に時間をかけることで興味深い成果をあげることができた.形質置換などが同所的種間に見られることから種同定におけるDNAバーコーディング適用に予定よりも時間がかかったが,種間・種内変異に新たな発見をもたらすことができた.初年度であることから実験室の整備や研究環境の構築に少し時間がかかったこともくわわり,当初予定していた同位体分析と腸内微生物相分析は予備的な作業にとどまり,やや遅れが見られる.一方で,先行研究における真無盲腸類の垂直分布や同所性分布,食性などの文献調査は順調に進んだ.また,進展の著しい生物多様性分野におけるメタバーコーディングとメタゲノミクスに関する論文調査を充実させた.初年度は7ヶ月間であったので,研究成果についての学術論文の公表はまだであるが,国内・国際学会で研究成果を発表するとともに,関連分野の研究者との議論を通じて研究への新たな着眼点を見いだすことができた.

今後の研究の推進方策

初年度に想定以上の種多様性が認められた長野県の一つの地点での分布・マイクロハビタットの現地調査とサンプル収集を継続して行う.特に昨年は秋に調査を行ったが,本年度は春や夏に調査を行うことにより,季節による分布やマイクロハビタット,さらには食性についての変動について解明を目指す.DNAバーコーディングによる種同定に続いて,次世代シークエンシング技術を用いて,マイクロバイオームおよび食物成分についての配列決定を進める予定である.初年度からの統合的な成果を国内学会で発表しながら,国際学術雑誌への原著論文の投稿,出版を進める予定である.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Phylogeny and systematic revision of the genus Typhlomys (Rodentia, Platacanthomyidae): with description of new species.2017

    • 著者名/発表者名
      Feng Cheng,Kai He, Zhong-Zheng Chen, Bin Zhang, Tao Wan, Bao-Wei Zhang, Xue-Long Jiang.
    • 雑誌名

      Journal of Mammalogy

      巻: - ページ: -

    • DOI

      doi.org/10.1093/jmammal/gyx016

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Description of a new species of Hoolock gibbon (Primates: Hylobatidae) based on integrative taxonomy2017

    • 著者名/発表者名
      Fan, Peng-Fei, He, Kai, Chen, Xing, Ortiz, Alejandra, Zhang, Bin, Zhao, Chao, Li, Yun-Qiao, Zhang, Hai-Bo, Kimock, Clare, Wang, Wen-Zhi, Groves, Colin, Turvey, Samuel T., Roos, Christian, Helgen, Kristofer M. and Jiang, Xue-Long
    • 雑誌名

      American Journal of Primatology

      巻: 79 ページ: -

    • DOI

      10.1002/ajp.22631

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Talpid mole phylogeny unites shrew moles and illuminates overlooked cryptic species diversity2017

    • 著者名/発表者名
      He, Kai, Shinohara, Akio, Helgen, Kristofer M., Springer, Mark S., Jiang, Xue-Long and Campbell, Kevin L.
    • 雑誌名

      Molecular Biology and Evolution

      巻: 34 ページ: 78-87

    • DOI

      10.1093/molbev/msw221

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Multilocus approaches reveal underestimated species diversity and inter-specific gene flow in pikas (Ochotona) from southwestern China2017

    • 著者名/発表者名
      Koju, Narayan Prasad, He, Kai, Chalise, Mukesh Kumar, Ray, Chris, Chen, Zhongzheng, Zhang, Bin, Wan, Tao, Chen, Shunde and Jiang, Xuelong.
    • 雑誌名

      Molecular Phylogenetics and Evolution

      巻: 107 ページ: 237-245

    • DOI

      doi:10.1016/j.ympev.2016.11.005

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Multi-locus phylogeny using topotype specimens sheds light on the systematics of Niviventer (Rodentia, Muridae) in China.2016

    • 著者名/発表者名
      Zhang, Bin, He, Kai, Wan, Tao, Chen, Peng, Sun, Guozheng, Liu, Shaoying, Nguyen, Truong Son, Lin, Liangkong and Jiang, Xuelong
    • 雑誌名

      BMC Evolutionary Biology

      巻: 16 ページ: -

    • DOI

      10.1186/s12862-016-0832-8

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Cryptic diversity in an enigmatic mammal species from the sky islands of southwestern China2016

    • 著者名/発表者名
      Kai He, Tao Wan, Klaus-Peter Koepfli, Xue-Long Jiang
    • 学会等名
      The 22nd International Congress of Zoology
    • 発表場所
      沖縄科学技術大学院大学(沖縄県・恩納村)
    • 年月日
      2016-11-16 – 2016-11-17
    • 国際学会
  • [学会発表] A new taxon of hoolock gibbon from Southwest China2016

    • 著者名/発表者名
      Fan, Peng-Fei, He, Kai, Chen, Xing, Ortiz, Alejandra, Zhang, Bin, Zhao, Chao, Li, Yun-Qiao, Zhang, Hai-Bo, Kimock, Clare, Wang, Wen-Zhi, Groves, Colin, Turvey, Samuel T., Roos, Christian, Helgen, Kristofer M. and Jiang, Xue-Long
    • 学会等名
      日本哺乳類学会2016年大会
    • 発表場所
      つくば大学(茨城県・つくば市)
    • 年月日
      2016-09-23

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公開日: 2018-01-16  

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