研究課題
本研究ではメタバーコーディングとメタゲノミクスの手法を用い,同所的に分布する真無盲腸類(食虫類)の食性と腸内微生物相の多様性解明を目指した.初年度に引き続き,8種の真無盲腸類が分布する長野県西駒山地において5月と8月の2回,異なる標高域を含む野外調査を行い,小型哺乳類のサンプル収集を行った.初年度のサンプルとあわせて,西駒山地における春,夏,秋の異なる季節を考慮した解析を進めた.季節,標高,種に着目して真無盲腸類の種構成と種間関係,垂直分布やマイクロハビタットの違いを検討した.真無盲腸類の種同定にはDNAバーコーディングの手法も用いた.捕獲データから季節や標高分布,マイクロハビタットの違いによる真無盲腸類の種構成が異なることが明らかになり,季節移動を含めた季節ごとの標高分布に関して興味深い個体群動態が見られることが示唆された.また,あわせてアカネズミ類2種との比較解析も行った.また,こうして得られたサンプルを用い,次世代シークエンス(NGS)の手法を用いた腸内微生物相の解析を行った.今年度はシークエンス実験解析まで終了した.種構成と分布の動態についての成果は,2017年9月に富山大学で開催された日本哺乳類学会年次大会および2017年12月にミャンマー・ヤンゴン大学で開催された京都大学・ヤンゴン大学国際シンポジウムで成果発表をするとともに,研究論文としてのとりまとめを進めている.次年度の研究も含めて,成果が得られることが期待できる.
2: おおむね順調に進展している
本研究に必要な分布データと解析サンプルは初年度をあわせて3回の野外調査で得ることができた.分布データの解析は順調に進んでおり,当初は予想していなかった季節間の変動も含めて生物多様性分野で価値ある発見につながった.腸内微生物相の解析も遺伝子抽出からシークエンスのNGS解析まで順調に進んでいる.このようにデータの収集と解析については順調に進んでいるが,全体のデータが揃った段階での論文執筆を計画しているために,本研究課題の中心的内容の論文執筆作業が遅れている.
今後は得られたサンプルのメタバーコンディングの手法を用いた真無盲腸の食性分析と種間や季節間の比較が必要である.研究を進める上での実験デザインはすでに出来ており,解析サンプルも揃っているので,最終年度に実験とデータ解析を進める予定である.また真無盲腸類のサンプルから採取した毛を用いてその同位体分析を行い,C13とN15比を用いた食性分析を行う予定である.いずれも当初から計画していた研究内容である.これらの解析結果もあわせながら,本研究の論文執筆も必要である.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Zoological Research
巻: 39 ページ: 335~347
10.24272/j.issn.2095-8137.2018.034
巻: 39 ページ: 356~363
10.24272/j.issn.2095-8137.2018.036
Vertebrata PalAsiatica
巻: 56 ページ: 248-263
PLoS Biology
巻: 16 ページ: e2005075
10.1371/journal.pbio.2005075
American Journal of Primatology
巻: - ページ: -
10.1002/ajp.22748
Comparative Biochemistry and Physiology Part B: Biochemistry and Molecular Biology
10.1016/j.cbpb.2018.01.001
Acta Theriologica Sinica
巻: 38 ページ: 217-220
Huang T, editor. Computational Systems Biology: Methods and Protocols. Springer New York.
巻: - ページ: 29-44
10.1007/978-1-4939-7717-8_3
Chinese Journal of Zoology
巻: 52 ページ: 865-869
10.13859/j.cjz.201705016