研究課題/領域番号 |
16F16096
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
酒井 英光 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (00354051)
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研究分担者 |
ZHANG GUOYOU 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター・気候変動対応研究領域, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-07-27 – 2019-03-31
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キーワード | 気候変動 / イネ / 外観品質 / 温暖化 / 大気CO2増加 |
研究実績の概要 |
大気CO2濃度増加と温暖化がイネの玄米品質に及ぼす影響を明らかにする目的で、茨城県つくばみらい市農家水田において開放系大気CO2増加(FACE)実験を行った。さらに、FACE実験区内において群落表面温度を開放系で増加させる温暖化実験装置(T-FACE)を用いて加温処理を行った。高CO2処理は今世紀中頃に到達すると予測される外気+200ppmの設定とし、移植から収穫までの生育期間を通して行った。一方、加温処理は温度依存性の高い生育ステージである出穂期から3週間の9~15時とし、外気温+2℃の設定で行った。 その結果、高CO2は、無加温区、加温区において整粒率をそれぞれ9、16%ポイント低下させた。整粒率低下の主要因は、基部未熟粒および腹白粒の増加であった。加温処理のみによっても基部未熟粒および腹白粒は増加したが、その程度は高CO2処理のそれよりも小さかった。高CO2処理と加温処理が基部未熟粒および腹白粒の増加に及ぼす影響は相加的であり、対照区と比較して高CO2・加温処理は、基部未熟粒を17%ポイント増加させた。 加温処理自体は玄米の窒素濃度に影響を及ぼさなかった。一方、高CO2処理では玄米の窒素濃度は低下し、これにより基部未熟粒が増加したと考えられた。玄米の窒素濃度への影響には、高CO2処理と加温処理の間に相互作用が認められ、高CO2処理による玄米窒素濃度の低下は、加温処理により軽減されることが分かった。 昨年度に得られた収量への影響を考慮すると、温暖化は大気CO2濃度の増加による玄米外観品質の低下を軽減するが、その一方で大気CO2濃度増加との相互作用により増収効果を打ち消すと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
つくばみらいFACE実験施設において開放系大気CO2増加実験および温暖化実験を行い、イネの収量に及ぼす影響を調査した。今年度は、取得したモミサンプルの品質分析を進め、大気CO2濃度の上昇と温暖化が玄米品質に及ぼす影響を明らかにし、研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのFACE実験およびT-FACE実験より、高CO2および高温がイネの収量および玄米品質に及ぼす影響について結果を取りまとめ、論文として投稿する。
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