研究課題/領域番号 |
16F16100
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園元 謙二 九州大学, 農学研究院, 教授 (10154717)
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研究分担者 |
SINGHVI MAMATA 九州大学, 農学研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 乳酸発酵 / D-乳酸 / Lactobacillus lactis / UV変異株 / 窒素源 / リン酸水素二アンモニウム |
研究実績の概要 |
本研究では、D-乳酸生産菌Lactobacillus lactis NCIM 2368およびそのUV変異株RM2-24の乳酸生産およびDおよびL-乳酸脱水素酵素(LDH)への窒素源の影響を明らかにした。 親株および変異株の両方を、対照および改変培地におけるD-乳酸産生について評価した。改変培地は、親株の場合には乳酸生産に顕著な効果を示さなかった。一方、変異株のD-乳酸産生に有意な増強を示したが、培養液中にL-乳酸が産生されていた。また、LDH活性は、親株より変異株において高いことが判明した。これらの結果は、改変培地中のリン酸水素二アンモニウム(NH4)2HPO4がLDH遺伝子の発現を誘発し、乳酸産生を増強することを示唆した。この観察は、定量的RT-PCRを用いた対照および改変培地中の親株および変異株のDおよびL-LDH遺伝子の発現レベルを調べることによって証明された。すなわち、変異株の場合、D-LDHおよびL-LDHの転写レベルは、対照培地で得られた値と比較して、改変培地においてそれぞれ約17倍および約1.38倍増加した。一方、親株の場合、D-およびL-LDHの転写レベルの有意な変化は、対照培地または改変培地のいずれかで増殖させた場合には見られなかった。これらの結果から、変異株RM2-24は改変培地中のリン酸水素二アンモニウム(NH4)2HPO4によってL-LDH遺伝子が発現され、その結果、L-乳酸生産に至ることが示唆された。 また、D-LDHの精製と、生化学的および構造学的解析を行った結果、大きな違いとして、変異株のD-LDHは親株のものに比べてピルビン酸への親和性が高いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書の作成段階で、予想される問題点を明確にしていたことと、数値目標を定め多方面からの検討を柔軟に行ったことが順調に進展する結果となった。また、研究代表者と分担者が互いの専門領域で柔軟に対処したことも大きな要因と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、前述した目的を達成するために、これまで得られた結果を基にして、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析に関する以下の具体的な項目について研究を進める。 1.トランスクリプトーム解析:定量RT-PCRを行い、D-LDHとL-LDHの遺伝子の発現について培養の経時的変化を中心に解析する。さらに、これらのmRNAについてノーザン解析を行い、(NH4)2HPO4添加の遺伝子発現への影響を調べる。
2.プロテオーム解析:細胞破砕物をトリプシン処理し、二次元電気泳動にかけ、Proteomeパターンを解析する。また、溶離したペプチドをMALDI-TOF解析、特にPeptide mass fingerprinting (PMF) とtandem mass spectrometry (MS/MS)、で同定する。これらProteomeデータを用いて、基本培地と改変培地(特に(NH4)2HPO4添加培地)で培養した際のタンパク質発現の違いを明らかにする。
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