研究課題/領域番号 |
16F16101
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中山 二郎 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40217930)
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研究分担者 |
YOUSUF BASIT 九州大学, 農学研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | クオラムセンシング / クロストリジア綱細菌 / ウェルシュ菌 / 酪酸菌 / ペプチド |
研究実績の概要 |
ヒト腸内フローラの中核を占めるクロストリジア綱細菌群には、善玉菌から悪玉菌そして病原菌も含まれ多種多様である。これまでの申請者らの研究および細菌ゲノム配列データから、こ のクロストリジアの多くが、種特異的な環状ペプチドシグナル(AIP)を用いて同種菌間でコ ミュニケーションを行い、遺伝子の発現を特異的にコントロールし(クオラムセンシング: QS)、また、時には他種細菌のQSを干渉(クオラムクエンチング)していることが示唆されている。本研究では、ヒト腸内のクロストリジア綱細菌群のQSを網羅的に調査し、さらにそれらのQSを人為的に制御し、疾病回避や健康増進につなげることを目指している。本年度は、クロストリジア綱細菌の中で、食中毒の原因菌としてしばしば問題となるClostridium perfringens(ウェルシュ菌)と、腸内常在有益菌であるClostridium butyricum(酪酸菌)について焦点を絞り、各菌におけるQSと両者間のQS干渉について調べた。C.perfringensは5残基のAIPcpによりVirSR QS系を介してシータトキシンを自己誘導する。一方、C.butyricumはAIPcpに類似のAIPcbを生産していた。AIPcbがC.butyricumの何の遺伝子発現を制御しているかは不明であるが、興味深いことにAIPcbはC.perfringensのVirSR QS系を阻害した。しかし、AIPcbは非常に不安定なペプチドであった。そこで、AIPcbの5残基目のHisをTyrに変換したペプチドを合成したところ、AIPcb-H5Yの活性が倍程度に上昇した。現在、AIPcbがC.butyricumにて何の遺伝子を制御しているか調査するとともに、C.perfringensとC.butyricumの間のQSのクロストークについてより詳細に解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内クロストリジア綱細菌群の腸内におけるクロストークのモデル系として、腸内有益菌のC.butyricum(酪酸菌)と腸内病原菌のC.perfringens(ウェルシュ菌)の間で、クオラムセンシングのAIPを介して、干渉している可能性が示唆された。今後、このモデル系をさらに拡張することで、ヒト腸内フローラの中核を示すクロストリジア綱細菌群が、腸管内にてどのようにQSあるいはQS干渉を行い、それぞれの細菌種の活性をコントロールしているかその全容に迫ることができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
LC-MSMSなどを有効に利用し、腸内のクロストリジア綱細菌群のAIPを網羅的に調査する。また、in vitro腸管モデルを用いることで、腸内細菌叢コミュニティーの中で、これらのAIPがどのように機能しているか調べる。そして、AIP等あるいはAIP分泌菌を用いて、腸内フローラの活性をコントロールしたり、腸内フローラ内の病原細菌のQSをコントロールしたりすることで、疾病予防や健康増進に繋げるられるか、可能性を追求したい。
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