研究課題/領域番号 |
16F16106
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大黒 俊哉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70354024)
|
研究分担者 |
DASGUPTA RAJARSHI 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2016-07-27 – 2018-03-31
|
キーワード | 土地利用モデリング / シナリオ分析 / マングローブ林 / 保護区 / 生態系サービス / 非物的便益 |
研究実績の概要 |
アジア太平洋地域を対象とする、生物多様性や生態系サービスのシナリオ分析研究の既往研究についての先行研究のレビューを行ない、レビュー論文の草稿を執筆した(近く国際誌に投稿予定)。また、土地利用・被覆情報を代理指標とする生態系サービスの評価・可視化の手法に関する先行研究のレビューを行ない、ガンジス川流域の土地利用シミュレーションと生態系サービスの評価に用いる方法論の検討を進めた。 次に、1973、2006、2016年のLANDSAT衛星の画像と地形図、航空写真等のデータをもとに、土地利用・被覆の教師付き分類を行ない、研究対象地のマングローブ林の空間分布やその時間変動を検討した。また、作成した土地利用・被覆データや数値標高モデル等の地理情報をもとに土地利用シミュレーションを行ない、2030年をタイムホライズンとする3つの土地利用シナリオを作成した。土地利用シミュレーションには、先行研究で将来予測能力が高いとされている多層パーセプトロンモデルによる機械学習を採用した。作成した3つのシナリオはそれぞれ、①傾向延長、②保全重視(マングローブ林の保全)、③開発重視(マングローブ林を養殖池や港湾等に開発)を想定している。3つのシナリオのシミュレーション結果を分析した所、いずれのシナリオにおいてもマングローブ林が減少を続けることが明らかとなった。 また、2017年1月下旬から2月中旬にかけてフィールドワークを行ない、衛星画像の教師付き分類の精度を向上するため、研究対象地の全域にわたり150地点を超える地上基準点(GCP)データを取得した。またあわせて、研究対象地でランダム抽出した沿岸部コミュニティの住民(合計212人)を対象として、構造化インタビューにより、マングローブ林が生み出すさまざまな生態系サービスの存在や受益、生態系サービスの変化等の認知を把握した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの所、文献レビュー、衛星画像の解析、土地利用シミュレーション、フィールド調査のいずれにも計画通り順調に進んでいる。フィールドワークでは、マングローブ林が生み出すさまざまな生態系サービスについて、住民の受益やサービスの変化の認知に関する貴重なデータが収集できた。今後、これらデータや衛星画像から作成した土地利用・被覆データをもとに、生態系サービスの解析を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度収集したデータをについてさらなる解析を進める。また、InVEST(Integrated Valuation of Environmental Services and. Ttradeoffs)モデルを用いて、生物のハビタットとしてのマングローブ林の質や、マングローブ林が持つ洪水・侵食制御等の生態系サービスの評価を行う。これら分析結果について学術論文として国際誌に投稿する他、国際会議でも報告する予定である。この他に、現地でス地方政府の職員を主たる参加者とするテークホルダー・ワークショップを開催し、本研究を通じて明らかにされたマングローブ林を含む土地利用・被覆や生態系サービスのシナリオ分析の結果を報告、意見交換を行う。
|