研究課題
HTLV-1がコードする遺伝子の中でHTLV-1 bZIP factor(HBZ)は全てのATL症例で恒常的に発現が認められる唯一のウイルス遺伝子であることから、発がんに重要な役割を果たすと考えられる。またHBZはタンパク質としてのみならず機能的RNAとして作用することも知られている。本研究ではHBZが発がんを誘導する分子機構に関する解析を行った。1)HBZ RNAの核内局在および機能発現機序の解析RNA-FISHによりHTLV-1感染細胞株ではHBZ RNAが主に核内に存在することを見出した。HBZ RNAの欠損変異体を用いた解析から、HBZ RNAにおけるポリA付加の低下が、HBZ RNAの核局在に関与していることを示唆する結果が得られた。HBZ RNAの核局在と細胞増殖促進効果には相関が認められ、HTLV-1感染細胞の増殖機序におけるHBZ RNAが核に局在することが重要であることが示唆された。2)HBZによるmicroRNA転写異常と病態への関与HTLV-1陰性細胞株であるJurkatにおけるHBZ安定発現株(Jkt-HBZ)とその対照細胞(Jkt-Mock)を用いてmiRNAマイクロアレイ解析を行い、Jkt-HBZにおいてmiR455-3pの発現が低下していることが明らかとなった。miR455-3pの標的遺伝子について、microRNA標的予測データベース等を利用してその候補遺伝子を探索し、WD repeat domain 26 (WDR26)を同定した。HTLV-1感染T細胞株であるHut102、MT4、ED、TL-Om1にmiR455-3pを過剰発現させたところ、細胞増殖能、遊走能の有意な低下が観察された。miR455-3p強制発現Hut102及びMT4細胞をNOD-scid/IL2rγnull (NSG)マウスに移植し、腫瘍形成を比較したところ、miR455-3p発現細胞では腫瘍形成の抑制、浸潤能の低下を認めた。以上のことから、HTLV-1感染細胞、ATL細胞では、HBZの発現によりmiR455-3pの発現抑制が惹起され、感染細胞の増殖促進能、浸潤能、遊走能を促進していると考えられ、HTLV-1感染細胞が発がんを来す過程で重要な役割を果たしていることが示唆される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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