研究課題
A群レンサ球菌は、上気道炎などの原因菌として多彩な臨床症状 を引き起こす。上皮細胞に感染した場合、オートファジーにより速やかに囲まれ除去されるが、血管内皮細胞ではこのオートファジーが著明に抑制されることを見出した。即ち血管内皮細胞ではオートファジーを抑制する未知なる機構があることが想定される。しかしながら、今回血管内皮細胞を血管内皮細胞増殖因子VEGF存在下に培養した場合、A群レンサ球菌の除去が速やかに起こることを見出した。この除去はオートファジーではなく、エンドソームリソソーム系の活性化によるものであり、この活性化にはそれらの活性化を担う転写因子TFEBの一過的な細胞質から核内への輸送によるものであることを見出した。しかしながらこれはTFEBの機能制御を担うmTROC1を介したものではないことから、新規のTFEB制御経路が存在することを示唆している。一方さらにオートファジーには依存しないものの、オートファジーの実行分子LC3がそのようなエンドソームリソソームにVEGF処理依存にリクルートされることも見出した。以上の結果から、血管内皮細胞ではVEGFに依存して、これまで知られていないシグナル経路を介することにより、A群レンサ球菌を除去する仕組みがあることを見出した。同時にA群レンサ球菌は血液中のVEGFを分解する活性もあることを見出した。これらの分子機構はA群レンサ球菌感染症の格好の治療標的となり、今後の創薬への基盤を提供する重要な結果であると考える。
2: おおむね順調に進展している
血管内皮細胞の新たな信号伝達経路を発見したため。
新たな信号伝達経路の分子的な実体を明らかにする。
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PLOS pathogen
巻: 13 ページ: e1006444.
10.1371/journal.ppat.1006444