チタンは生体親和性、骨結合性、耐腐食性が高いことからインプラント材料として広く利用されている。一方で、インプラント後の安定性向上の観点から、より 強く骨と結合する、もしくは、積極的に骨を形成するために骨伝導性を有するチタンインプラントが求められている。骨伝導性を有するセラミック材料であるハ イドロキシアパタイトをコーティングしたチタン等研究が行われているが、ハイドロキシアパタイトは骨置換性がない。一方で、ハイドロキシアパタイトの一部 を炭酸基に置換した炭酸アパタイトは骨置換性があり、骨伝導性に関しても非常に高い。本研究においては、チタン表面を炭酸アパタイトにより被覆してチタンに骨伝導性を付与し、チタンインプラントとしての有用性を検討した。 2019年度は、2018年度の検討で得られた炭酸アパタイト被覆チタンの骨伝導性の培養細胞での評価を主に行った。 具体的には、MC3T3-E1細胞を炭酸アパタイト被覆チタンに播種して細胞接着・増殖評価を、骨芽細胞の分化マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)活性をそれぞれ評価した。炭酸アパタイト被覆チタンは未修飾チタン、前駆体であるリン酸亜鉛被覆チタンよりも有意に細胞接着性が上昇し、細胞増殖も向上した。ALP活性については、炭酸アパタイト被覆チタンは未修飾チタンの3倍、リン酸亜鉛被覆チタンの1.5倍高かった。以上のことより、炭酸アパタイト被覆チタンは培養細胞レベルではあるがチタンの骨伝導性を向上することが示唆された。受入期間終了前には実験動物への炭酸アパタイト修飾チタンの埋入が終了しており、病理組織染色の結果が待たれる。
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